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中途入社者の早期戦力化に効く!「人脈・仕事・メンタル」3つのサポートとは
「即戦力として採用したはずなのに、思ったほど現場で活躍できていない・・・」
期待を込めて採用したものの、振り返ってみると期待通りに活躍している人材は半数にも満たない──そんなお悩みをお伺いする機会は増えています。
背景には、中途採用者が「仕事そのもの」よりも「組織になじむこと」でつまずいているケースがあります。新卒とは異なり、社会人経験やスキルを持つ中途採用者は、即戦力としてのパフォーマンスを求められがちです。
一方で、彼らにとっては業務内容以上に、組織特有の暗黙知や人間関係の構築、周囲からの期待とのギャップといった心理的課題が大きな壁になります。
人材不足の時代にあって、中途採用は今後さらに増えることが予想されます。採用した人材が「早期に戦力化するか」「不適応で離職してしまうか」は、企業の競争力に直結します。
今回は、その分岐点となる入社後の支援体制について、重要となる3つのポイントをご紹介します。
※本コラムは、入社後活躍研究所が公開している「尾形教授に聞く!中途採用者を『組織になじませる』3つのサポート」(エン・ジャパン 2023年7月27日)を参考に、中途入社者の組織適応を支援する具体的な施策を整理した内容です。
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中途入社者は前職での成功体験やスキルを持ち込むことができる一方で、新しい組織ではゼロから人的ネットワークを構築しなければなりません。また、前職との仕事の進め方の違いに戸惑ったり、早期に成果を求められるプレッシャーを強く感じたりするケースもあります。
ある研究では、中途入社者が活躍できない大きな要因として「組織側からの支援不足」が指摘されています。成果を求める前に「組織に馴染む」プロセスを支援することが欠かせないのです。
特に重要なのが、
- 人脈サポート(人的ネットワークの構築)
- 仕事サポート(実務における適応支援)
- メンタルサポート(心理的な支え)
の3つです。
これらを適切に提供することで、中途入社者の組織適応を促進し、早期離職を防ぎ、成果発揮を後押しできます。
では、この3つのサポートをどのように実現するべきでしょうか。
ポイントは「誰が担うと最も効果的か」を理解し、役割を適切に設計することです。
- ● 人脈サポート ・・・ 上司が最も効果的
- 上司は業務の全体像を把握しており、どの部署・どの人とつながれば成果を出しやすいかを理解しています。影響力を持つ立場から紹介してもらうことで、中途入社者もスムーズに関係を築けます。
- ● 仕事サポート ・・・ プロパー社員が最も効果的
- 日々の実務に密着しているのはプロパー社員です。業務の進め方や暗黙のルールを理解しているため、中途入社者の課題をいち早く把握し、適切にフィードバックを行ないやすくなります。
- ● メンタルサポート ・・・ 中途で入社した先輩が最も効果的
- 精神的なプレッシャーや孤独感は、同じ立場を経験した人だからこそ深く理解できます。中途入社ならではの悩みや葛藤を共有し合えることで安心感や適切な解決策を導くことにもつながります。
このように「人脈=上司」「仕事=プロパー社員」「メンタル=中途先輩」と、それぞれが持ち得る強みに応じて役割分担することで、無理なく効果的なサポート体制を築けます。人事としては、この特徴を理解したうえで、支援体制を制度として整え、現場に根付かせていくことが大切です。
ただし、誰をサポート担当に選ぶかは慎重さが必要です。中途入社者は自分なりの仕事観を持っており、助言を受け入れにくい場合もあります。サポート担当を選ぶ際は、相性や適性、支援への意欲を見極めることも必要です。
では、人事が中途入社者を支援するために、どのような仕組みや施策を設計できるのでしょうか。3つのサポートそれぞれに対応する施策例をご紹介します。
- 人脈サポート(上司が中心)
-
● 配属初日に「社内紹介タスク」を必須化
上司が必ず部署外の5名を紹介するルールを設け、紹介先を人事に報告してもらう仕組みをつくる。紹介が終わったらチェックリストに記録し、人事がフォローアップ。
● 紹介しやすい環境を整える
人事側で「部署別紹介先の例」を用意するなど、上司が動きやすいように支援する。
● ネットワーク構築度の定期確認
入社3か月後にアンケートを実施し、「相談できる人がいるか」「他部署とつながりを持てているか」を可視化。人脈不足があれば追加支援を検討する。
- 仕事サポート(プロパー社員が中心)
-
● OJT担当を選任
中途先輩ではなく、長年その組織に所属する社員からOJT担当者を設定する。
● トレーナー研修の提供
人事がOJT担当者向けに「フィードバックの技法」「アンラーニング支援の方法」を学ぶ研修を実施する。
● 進捗レポートの仕組み
OJT担当者は月1回、進捗や課題を人事に簡単に報告。人事は内容を確認し、必要に応じて面談や追加研修を調整する。
- メンタルサポート(中途先輩が中心)
-
● メンターの仕組み化
配属と同時に「中途先輩メンター」を割り当てる。経験の近さを重視しつつ、年齢や適性も考慮して適切な社員をアサインする。
● メンター支援ツールの提供
人事が「自分が入社時に苦労したことリスト」を収集し、メンター同士で共有。対話のきっかけとして活用できるようにする。
● 人事との定期フォロー
メンター自身も負担を抱えすぎないよう、人事が定期的にヒアリング。メンターの悩みや不安を吸い上げる仕組みをつくる。
中途入社者を活躍させる鍵は、「人脈・仕事・メンタル」の3つのサポートを適切に提供することです。そして、それぞれ最も効果を発揮できる担い手が異なります。
- 人脈サポート=上司
- 仕事サポート=プロパー社員
- メンタルサポート=中途入社の先輩
この役割分担を前提に、人事が制度として設計し、現場に浸透させることが重要です。
中途入社者が早期に馴染み、能力を発揮できるようになれば、採用の投資効果は最大化されます。人事がリードし、上司・プロパー社員・中途先輩を巻き込むサポート体制の構築を目指していきましょう。
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