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人事が知るべき法改正 [ 2025年・2024年 ]

公開日 2024/12/18
更新日 2024/12/18
要約すると
  • 育児・介護休業法の改正で、「働き方の柔軟化」が企業の義務に。
  • 雇用保険法等の改正で、セーフティネットが拡充して自己都合退職が増加?企業の対策は?
  • その他マイナ保険証、障がい者・高年齢者雇用、労働条件明示など、25年・24年法改正まとめ
監修者
「人事のミカタ」編集長/第二種衛生管理者/認定心理士
手塚伸弥
2001年から人材系企業にて求人広告・採用広報ツールなどのコピーライター、クリエイティブディレクターを経て、2014年エン・ジャパン入社。以後、編集長として採用・人事労務・雇用関連の調査や情報発信を行なう。
はじめに

いよいよ12月。2025年の足音が聞こえてくる時期となりました。とはいえ「今年の仕事はあと少し。来年のことは来年考えれば…」といかないのが人事労務のお仕事。特に、「法改正」への対応は準備に時間がかかるものです。

そこで今回は、「人事が知るべき法改正」と題し、来年2025年に企業が対応する必要のある法律に関してご紹介。おさらいとして2024年分もまとめています。まだ未対応のものがあれば、ぜひ参考にしてください。

[2025年4月・10月施行] 企業側で「働き方の柔軟化」等が義務に!【育児介護休業法】

未曽有の少子化、高齢化社会が進む中、就労世代の男女が育児・介護と仕事を両立できるよう、改正「育児介護休業法」が、2025年4月・10月に施行されます。

企業側としては、育児をする社員の「柔軟な働き方」の実現や、介護をする社員の「離職防止」のための雇用環境整備、個別周知・意向確認等が義務となります。

育児関連

[2025年4月施行]

義務 子の看護等休暇の見直し
  • 小学校3年生修了まで延長
  • 入学式など行事でも取得可能に
  • 労使協定による継続雇用期間6か月未満除外規定の廃止
  • 名称を「子の看護休暇」に変更
義務 残業免除の対象拡大
  • 3歳未満→小学校就学前の子を養育する労働者に拡大
努力義務 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置
  • 育児休業に関する制度に準ずる措置・始業時間の変更等に、「テレワーク」を追加
義務 育児休業取得状況の公表義務適用拡大
  • 従業員数1,000人超の企業→従業員数300人超に変更

[2025年10月施行]

義務 柔軟な働き方を実現するための措置等 ①育児期の柔軟な働き方を実現するための措置として、以下5つの中から、2つ以上の措置を選択して講ずる(労働者は、講じた措置の中から1つを選択して利用する)
  • 始業時刻等の変更
  • テレワーク等(10日以上/月)
  • 保育施設の設置運営等
  • 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
  • 短時間勤務制度
②柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認。子が3歳になるまでの適切な時期に、上記の措置に関して、周知と制度利用の意向の確認を、個別に行なう。
義務 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
  • 妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関して、労働者の意向を個別に聴取する
  • 聴取した労働者の意向について、自社の状況に応じて配慮する
介護関連

[2025年4月施行]

義務 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
  • 労使協定による継続雇用期間6か月未満除外規定の廃止
義務 介護離職防止のための雇用環境整備 以下のいずれかの措置を講ずる
  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  • 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  • 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
義務 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
  • 介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
  • 介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
義務 育児休業取得状況の公表義務適用拡大
  • 従業員数1,000人超の企業→従業員数300人超に変更
[2025年4月・10月施行] セーフティネット拡充で、自己都合退職が増える?【雇用保険法等】

生活、雇用の安定や、就職促進のために必要な給付他、労働者の能力向上を図ることを目的とした「雇用保険法等」改正が、2025年4月・10月に施行されます。

多様な働き方を支える雇用のセーフティネット構築、「人への投資」の強化、共働き・共育ての推進等、様々な雇用保険制度が見直しされています。自己都合退職者の給付制限が解除・短縮されることで、退職者が増えることを懸念する企業が散見されますが、優秀な人材が多く流動することも考えられます。離職防止だけでなく、通年での採用も検討しておくことをオススメします。

教育訓練やリ・スキリング支援の充実 【2025年4月】自己都合で退職した者が、教育訓練等を自ら受けた場合に、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする
(自己都合退職(教育訓練なし)の場合、給付制限を1か月に短縮)
【2024年10月】教育訓練給付金を受講費用の最大70%から80%に引き上げ
【2025年10月】自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練休暇を取得した場合、期間中の生活を支える基本手当相当の給付金創設
育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保 【2024年5月】育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置廃止
【2025年4月】育児休業給付の保険料率を引き上げつつ(0.4%→0.5%)、 保険財政の状況に応じて引き下げ(0.5%→0.4%)られるようにする
その他雇用保険制度の見直し 教育訓練支援給付金の給付率の引下げ(基本手当の80%→60%)及びその暫定措置の令和8年度末までの継続他

本特集では2025年・2024年の法改正を取り上げるため紹介はしないものの、2028年には「雇用保険の適用拡大」が施行されます。雇用保険の被保険者の要件を、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大するというもの。アルバイト・パート従業員を多く雇用する企業にとっては大きな変化のため、今後情報をまとめ、発信していきます。

[2025年4月施行] 業種別の障がい者雇用「除外率」が引き下げに【障害者雇用促進法】

一律の障がい者法定雇用率(義務)を適用することが難しい業種に対して、義務を軽減する措置として設けられた「除外率」が、2025年4月から設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられます(現在除外率が10%以下の業種については除外率制度の対象外)。

除外率設定業種 除外率
非鉄金属第一次製錬・精製業・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く) 5%
建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業(信書便事業を含む) 10%
港湾運送業・警備業 15%
鉄道業・医療業・高等教育機関・介護老人保健施設・介護医療院 20%
林業(狩猟業を除く) 25%
金属鉱業・児童福祉事業 30%
特別支援学校(専ら視覚障がい者に対する教育を行う学校を除く) 35%
石炭・亜炭鉱業 40%
道路旅客運送業・小学校 45%
幼稚園・幼保連携型認定こども園 50%
船員等による船舶運航等の事業 70%

障がい者雇用に関しては、複数年で様々な改正が施行されています。法定雇用率、算定方法他、確認しておきましょう。

①法定雇用率は今後も段階的に引き上げ
2021年4月 2024年4月 2026年7月
民間企業の法定雇用率 2.3% 2.5% 2.7%
対象事業主の範囲 43.5人以上 40.0人以上 37.5人以上
②雇用における障がい者の算定方法が変更
精神障がい者の算定特例の延長 【2023年4月】週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障がい者について、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定できるようになります。
一部の週所定労働時間20時間未満の方の雇用率への算定 【2024年4月】週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障がい者、重度身体障がい者及び重度知的障がい者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになります。
③[2024年4月以降]障がい者雇用のための事業主支援が強化(助成金の新設・拡充)
雇入れ・雇用継続に関する相談支援、加齢に伴う課題に対応する助成金を新設
  • 事業者は、原則無料で、雇入れやその雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助を受けられる
  • 加齢により職場への適応が難しくなった方に、職務転換のための能力開発、業務の遂行に必要な者の配置や、設備・施設の設置等を行った場合、助成が受けられる
既存の障がい者雇用関係の助成金拡充
  • 障がい者介助等助成金や職場適応援助者助成金の拡充、職場実習・見学の受入れ助成の新設など、事業主の障がい者雇用支援を強化
[2025年3月で経過措置終了] 希望する65歳までの雇用確保がすべての企業の義務に!【高年齢者雇用安定法】

労使協定により、高年齢の従業員を希望に応じて、定年後も「継続雇用」する制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主に対して、これまでは経過措置として段階的な定年年齢が認められていましたが、いよいよ2025年の3月末で終了します。

これにより、すべての企業で希望する65歳までの雇用確保(定年制の廃止、65歳までの定年の引き上げ、希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入の内いずれか)が義務となります。65歳まで継続雇用をする旨が、就業規則に定められていない場合は、急ぎ対応が必要です。ご注意ください。

[2024年12月施行] 紙の保険証が新規発行終了。企業の対応は?【マイナンバー法】

2024年12月現在、連日のように報道されているのがマイナ保険証と、伴う紙の保険証の新規発行終了に関する話題。企業側としては、社員へのアナウンスや対応を忘れずに実施しましょう。

マイナ保険証の準備方法に関する告知内容
  • マイナ保険証への切り替え案内
  • マイナンバーカード非所持者へは発行方法の案内
  • マイナンバーカード所持者でマイナ保険証に紐づけしてない人へは、保険証との紐付け方法の案内
注意事項の告知
  • 現行の保険証が使えなくなるまで有効期限は1年間あること
  • マイナカード非所持者、保険証と紐付けていない人は、交付される「資格確認書」で受診可能なこと
  • 「資格確認書」の取得に申請は不要。有効期限5年間
  • 現行の保険証の返却・返送の必要はなし
[2024年10月施行]短時間労働者が社会保険の適用対象に【労働基準法】

社会保険の適用拡大は、2016年の制度改正から始まり、2022年10月には従業員数101人~500人の企業に範囲が拡大、そして2024年10月から従業員数51人~100人の企業も対象に入っています。

働く人の保障を手厚くするため、社会保険の適用要件の緩和が進められていますが、短時間労働者を雇用する企業にとっては金銭的負担の増加が悩ましいところと言えます。

対象となる要件
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が88,000円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない
従業員数のカウント方法 従業員数51人~100人に当たるかは、以下のA+Bの合計「現在の厚生年金保険の適用対象者」で確認します。

A「フルタイムの従業員数」+B「週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数※」※従業員にはパート・アルバイトを含む

※原則として、従業員数の基準を常時上回る場合には、適用対象になります。法人は、法人番号が同一の全企業を合計。個人事業所は個々の事業所ごとにカウント。

社内の準備方法 【Step1】加入対象者の把握
新たな加入対象者を把握した上で、貴社の対応方針を決定

【Step2】社内周知
新たな加入対象従業員に、法律改正の内容が確実に伝わるよう、社内イントラやメール等を活用し周知

【Step3】従業員とのコミュニケーション
必要に応じて説明会や個人面談

【Step4】書類の作成・届出(オンライン)
被保険者資格取得届の届出・手続き。2024年10月7日までに厚生年金保険の「被保険者資格取得届」をオンラインで届け出
[2024年4月施行]久しぶりの採用企業はフォーマットDLをお忘れなく!労働条件明示ルールの変更【労働基準法】

2024年4月1日から、労働契約の締結のタイミング、有期労働契約の更新のタイミングで、労働条件として明示すべき事項が、新たに追加されました。頻繁に採用選考を行なっている企業はすでに対応されているかと思いますが、充足していたなどの理由で、直近採用をしていなかった企業は、必ずご確認ください。

明示のタイミング 新しく追加された明示事項
全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時 1.就業場所・業務の変更の範囲
有期労働契約の締結時と更新時の有無と内容 2.更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容※併せて、最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時 3.無期転換申込機会
4.無期転換後の労働条件

※併せて、無期転換後の労働条件を決定するに当たって、就業の実態に応じて、正社員等とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならない

新しい労働条件明示ルールに対応した「雇用契約書(正社員・有期雇用社員)」と「労働条件通知書(正社員・有期雇用社員)」は、下記からダウンロード可能(無料・会員登録が必要)です。ぜひ、ご活用ください。

[2024年4月施行]裁量労働制の見直し【労働基準法】

労働者が「裁量労働制」という制度を正しく理解し、自由意志に基づいて同意している、または同意を撤回できるようになりました。労使での手続きが追加されていますので、以下を参考にしてください。

「専門業務型」裁量労働制を導入する・している企業の場合
  • 銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)が追加
  • 本人同意を得ること、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことを労使協定に定める
  • 同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定める
「企画型」裁量労働制を導入する・している企業の場合
  • 本人同意を得ること、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことを労使協定に定める(労使委員会の決議に定めることはすでに義務づけ)
  • 同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定める
  • 労使委員会に賃金・評価制度を説明する
  • 労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う
  • 労使委員会は6か月以内ごとに1回開催する
  • 定期報告の頻度は、初回は6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回に変更
有期労働契約の締結時と更新時の有無と内容 2.更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容※併せて、最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要

その他の留意事項として、以下が追加になっています。

事業場の対象労働者全員を対象とする措置
  • (新)勤務間インターバルの確保
  • (新)深夜労働の回数制限
  • (新)労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
  • ・年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めたその取得促進

※上記の措置を1つ以上実施することが望ましい

個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置
  • (新)一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
  • ・代償休日又は特別な休暇の付与
  • ・健康診断の実施
  • ・心とからだの健康問題についての相談窓口設置
  • ・適切な部署への配置転換
  • ・産業医等による助言・指導又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

※上記の措置を1つ以上実施することが望ましい

さいごに

2024年・2025年の法改正情報は、いかがだったでしょうか?企業にとって悩ましい法案もありますが、対応のヒントが見つかれば幸いです。ぜひご参考ください。

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