- 2社に1社が、「働き方改革法」により「経営に支障をきたす」と回答!
- 「残業の上限規制」、「同一労働同一賃金」、「有給取得義務化」他、法改正のポイント
- 社労士に聞く!「働き方改革法」企業の対策
2018年夏、「人事のミカタ」では企業の経営者・人事担当者648人に「働き方改革法」についてアンケートを実施。「働き方改革法」が施行された際、経営に支障があるかどうか伺ったところ、なにかしらの「支障が出る」と回答したのは合算で47%。約2社に1社は悪影響を懸念していることがわかりました。
法案が経営に支障をきたす要因を聞いてみると、もっとも多かったのは「時間外労働の上限規制」法案。次いで「年次有給取得の義務化」、「同一労働同一賃金の義務化」が続きました。特に人材に余剰が少ない中小企業にとっては時間外労働の規制は厳しいという声が散見されました。
- ●長時間労働が当たり前という風土の業界なので。
- ●クライアントのスケジュールに左右されるため、クライアントが残業を減らすため先に終業したところ、それ以降の作業は弊社になるだけ。結果的に、サービス残業の増加で補う状態に陥りそう。
- ●残業を抑えることにより、人員確保が急務となり、人件費増に繋がると思われるため。
- ●その仕事をできるのが1人だけという仕事が多く、休みが取得しにくい。
- ●中小企業にまでこの制度を当てはめるのは無理がある。限られた人数で業務をこなさなければならない為、今のこのご時世多少の負荷がかかっても仕方のないこと。これを全て義務化となった場合、会社の経営は成り立たない。
- ●代休すら消化出来ていないので、有給を強制的に取らせるのもどうかと思いました。
- ●非常勤職員への手当・賞与等を正職員と同じように出さなければいけなくなるので、その分の運営費が支給されていないので、人件費率が上がり、経営を圧迫する恐れがある。
- ●未経験の新人と熟練者では同一労働であっても、経験値や遂行能力に差があり、一律同一賃金とするには無理が生じます。
「働き方改革法」は、上記8つの法案が含まれています。多くは2019年4月からの施行ですが、中小企業において猶予期間が設定されている法案もあります。大きく経営に影響するという回答のあった「時間外労働の上限規制」もその一つ。
中小企業であるか大企業であるかは、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数(事業場単位ではなく、企業単位)」で判断されます。
「常時使用する労働者数」については、企業の通常の状況により判断します。臨時的に雇い入れた場合や、臨時的に欠員が生じた場合については、労働者の数に変動が生じたものとして取り扱う必要がありません。パート・アルバイトであっても、臨時的に雇い入れられた場合ではなければ、常時使用する労働者数に算入する必要があります。ご注意ください!
本法案のもっとも大きなポイントは、罰則規定となっていることです。違反した場合には、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
労務上の対策としては、時間外労働が多い従業員については職務の見直し、分担を検討するとともに、職場の勤務体制に合わせたフレックスタイム制・裁量労働制の導入なども検討しましょう。
これまでも限度時間を超える場合は、労働者側との協議や通告などの手続きは必要でしたが、実質的に機能しているとは言えませんでした。これからは労働者代表に対する事前申し入れ等、限度時間を超える場合の手続きを36協定に明記し、必要な手続きを踏まなければなりません。
新しい36協定届には、上限時間を再確認するチェックボックスは追加されるなど、労使で確認の上、チェックを入れる書式になっています。チェックボックスにチェックがない場合には、有効な協定届とはなりません。これまで以上に適切な労働時間管理が求められます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html
「年次有給休暇取得の義務化」は、有給休暇が年10日以上ある労働者について、そのうち5日の取得を企業側に義務付けたものです。
「時間外労働の上限規制」同様、違反した場合には「30万円以下の罰金」が科されますので、企業としては有給休暇の取得促進に向けての取り組みが求められます。有給取得が遅れている社員に有給休暇を取得してもらうためには「有給休暇の計画的付与制度」の導入をお勧めします。
年次有給休暇の「計画的付与制度」とは、年次有給休暇のうち、5日を超える分について、労使協定を結ぶことにより、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことをいいます。
ただし年次有給休暇の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければならないため、年次有給休暇の付与日数が10日の従業員に対しては5日、20日の従業員に対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。
この制度の導入で、休暇取得の確実性が高まり、従業員にとっては予定した活動を行いやすく、事業主にとっては計画的な業務運営に役立つと考えます。
同一労働同一賃金は、企業・団体における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間の、不合理な待遇差の解消を目指すものです。施行期日は、大企業で2020年4月、中小企業は2021年4月となり、まだ少し施行までに猶予があります。
現段階では裁判例などを参考に、自社の賃金規定を見直して、同一職種において不合理な格差が生じていないか点検しておくことをおすすめします。
【同一労働同一賃金】ハマキョウレックス事件について教えてください。
https://partners.en-japan.com/qanda/desc_1012/
【同一労働同一賃金】長澤運輸事件について教えてください。
https://partners.en-japan.com/qanda/desc_1013/
勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。今回の働き方改革では勤務間インターバル制度導入は、企業の努力義務となっています。
「勤務間インターバル」を導入した場合として、上図のような働き方が考えられます。この他にも、ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないこととするなどにより「休息期間」を確保する方法も考えられます。
自社に取り入れるためには、①労働時間の管理は現状のままで対応できるかどうか、②当事者にインターバル時間(翌日の出社時間)をどのように認識させるのか、③勤務開始が遅れた場合の代替要員の確保といった課題を検討する必要があります。
厚生労働省では専用サイトを設けて、企業の導入事例を公表しておりますのでこちらも参考にしてください。
企業は、産業医に対して産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないことになりました。さらに衛生委員会に対し、産業医が行なった労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告しなければなりません。
企業は、産業医等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければなりません。企業による労働者の健康情報の収集、保管、使用 及び適正な管理について、指針を定め、労働者が安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにしてください。
高度プロフェッショナル制度は、高度な専門知識を有し一定水準以上の年収を得る労働者について、労働時間規制の対象から除外する制度です。
その対象業務や年収要件などの事項については、「厚生労働省令」で定めることとされており、省令制定事項に関する議論が労働政策審議会労働条件分科会で始まり、その概要が見えてきました。
これまでのフレックスタイム制は、 「清算期間」(最長1か月)で定められた所定労働時間の枠内で、労働者が始業・終業時刻を自由に選べる制度でしたが、働き方改革法によって「清算期間」は最長3か月に延長され、より柔軟な働き方が可能となります。
月60時間超の時間外労働に対する割増賃金制度ですが、2023年4月1日に、猶予されていた中小企業への措置が廃止になります。大企業と同様に50%の割増率となります。
「働き方改革法」の施行まで2ヶ月を切りました。本法案に関しては、今後も情報を更新していきます。ぜひご参考ください。