人事のミカタ エンが提供する
採用担当のためのメディア
3つのポイント
  • お役立ち資料
    ダウンロードし放題!
  • 採用・労務の最新
    情報
    を毎週お届け!
  • 会員限定
    プレゼントも!
ログインはこちら
採用に関する
ご相談はこちら
お問い合わせ
本日のブラボー
ありがとうございます!
よろしければ、一言メッセージをお願いします!
よろしければ、コメントをお願い致します。
改善に向けて対応させていただきます。
総力特集!
月刊「人事のミカタ」

中途採用ノウハウ、ユーザー調査、法改正情報が満載!

3 ブラボー
0 イマイチ

カスハラ義務化、社保・雇保拡大、労基法改正。人事が今から備えるべき法改正は?

人事のためのサキヨミ法改正[2027年・2028年]

公開日 2026/7/1
更新日 2026/7/1
要約すると
  • ハラスメント対策:カスハラ対策の義務化が確定。大企業は2026年10月、中小企業は2028年4月から完全義務化。
  • 雇用・社会保険:2027年10月の社保拡大(36人以上)に続き、2028年10月には「雇用保険の週10時間基準」が施行。
  • 労基法改正:40年ぶりの大改正は流動的ながら、勤務間インターバル11時間や連続勤務14日禁止など「休息と健康確保」へのシフトが本格化。
監修者
「人事のミカタ」編集長/第二種衛生管理者/認定心理士
手塚伸弥
2001年から人材系企業にて求人広告・採用広報ツールなどのコピーライター、クリエイティブディレクターを経て、2014年エン入社。以後、編集長として採用・人事労務・雇用関連の調査や情報発信を行なう。
はじめに

2026年は早くも後半戦。深刻な人手不足や物価高といった目先の脅威に触れる中、中長期的な組織運営を見据える上で避けて通れないのが「法改正」への対応です。

特に来年2027年から2028年にかけては、労働基準法の約40年ぶりとなる抜本的な見直しや、社会保険・雇用保険の適用範囲の劇的な拡大など、様々な法改正が重なる見通しとなっています。

これらを単発の事案として受け止めていると、直前になって場当たりな対応となり、現場やシステムに混乱を及ぼすリスクも。そのため今回は「人事のためのサキヨミ法改正[2027年・2028年]」と題して、2026年6月時点で、人事が先読みして備えておくべき法改正のポイントや現在の状況などを、分かりやすく解説します。

[2027〜2028年] 人事・労務が関係する法改正一覧と進捗状況

まずは、2026年6月時点で確定している事項と、議論段階である事項を一覧化していきます。自社への影響度に応じて優先順位をつけることが最初のステップになるでしょう。

【施行日確定】今すぐ具体的な準備に着手すべき事項
人事が押さえるべき重要テーマ 施行時期 / 確定度 自社の影響度チェック
(当てはまる企業)
人事・採用担当者が
まず起こすべき具体アクション
サキヨミ重要度
①カスハラ防止措置の中小企業義務化 2028年4月1日施行
※大企業は2026年10月~
店舗、営業、カスタマーサポートなど、一般消費者や取引先と接する全ての企業
  • ●自社における「カスハラ判定基準」の言語化
  • ●社内・社外の相談窓口の設置と周知
  • ●現場向けの対応マニュアルの整備

(今すぐ準備)
②社会保険の適用拡大(従業員36人以上) 2027年10月1日施行
(確定)
被保険者数が常時36人以上となる中小企業全般
  • ●新たに加入対象となるパート・アルバイトの特定
  • ●対象スタッフへの個別面談(働き方の意向確認)
  • ●社保加入のメリット(将来の年金増額等)の丁寧な説明

(今すぐ準備)
③雇用保険の加入対象拡大(週10時間以上) 2028年10月1日施行
(確定)
短時間パート、アルバイト、学生スタッフを多く雇用している企業
  • ●週10時間〜20時間未満で働く従業員数の洗い出し
  • ●会社負担となる保険料コストのシミュレーション
  • ●雇用契約書ひな形の改訂

(今すぐ準備)
【方向性明示】今後の審議動向を見据え、先回りで棚卸ししておくべき事項
人事が押さえるべき重要テーマ 施行時期 / 確定度 自社の影響度チェック
(当てはまる企業)
人事・採用担当者が
まず起こすべき具体アクション
サキヨミ重要度
④11時間インターバル確保の義務化 2027年以降順次
(見込み・審議中)
シフト制(遅番・早番)のある職場、夜勤・交代制のある現場、残業が常態化している部署
  • ●現行の勤務シフト表から「11時間未満」のパターンの抽出
  • ●自社内で「一律確保が難しい緊急業務」の洗い出し
  • ●勤怠システムのアラート機能の有無を確認

(実務影響大)
⑤連続14日以上の勤務禁止 2027年以降順次
(見込み・審議中)
小売、飲食、サービス、建設、医療介護など、休日の曜日が固定されていない職場
  • ●就業規則における「休日振替規定」の総点検
  • ●休日が偏りやすい繁忙期の稼働実態のシミュレーション

(実務影響大)
⑥法定休日の「曜日特定」義務化 2027年以降順次
(見込み・審議中)
シフト制を導入している企業、多店舗展開を行っている企業
  • ●就業規則等で法定休日が事前に特定されているかの確認
  • ●割増賃金(休日手当)の社内計算ルールの見直し

(設計見直し)
⑦副業時の労働時間通算(割増)の廃止 2027年以降順次
(見込み・審議中)
副業を許可している企業、他社で副業している人を自社で雇用する企業
  • ●割増賃金計算の廃止に伴う副業ガイドラインの改訂
  • ●「健康管理のための副業時間把握」の運用フロー構築

(設計見直し)
⑧週44時間特例措置の廃止 2027年以降順次
(議論中・流動的)
常時10人未満の商業、理美容、旅館、飲食などの特例対象企業
  • ●特例廃止を見据えた「週40時間制」への移行シミュレーション
  • ●シフト人員配置の再設計

(動向に注目)
⑨部分的フレックスタイム制の導入検討 2027年以降順次
(議論中・流動的)
テレワーク導入企業、多様で柔軟な働き方をさらに推進したい企業
  • ●育児・介護や在宅勤務に適したフレックス適用範囲の検討
  • ●多様な勤務パターンに対応するための労働時間把握方法の再設計

(動向に注目)
2027〜2028年の人事・労務法改正:論点の全体像

労働基準法の大改正案は、2026年の通常国会への提出が見送られる見通しとなりました。急激な規制強化による中小企業の人手不足への影響や、勤務間インターバル等のシステム対応の難しさといった実務上の壁が、労使間での慎重な調整を必要としたためです。

しかし、法改正が延期されたとはいえ、労基署による過重労働への指導は年々厳格化しています。将来の施行を見据え、現行法の範囲内でも生じているリスクの洗い出しが急務です。

また、今回の改正議論の本質は、これまでの「上限時間で縛る規制」から、勤務間インターバルや連続勤務制限など「休息と健康確保」を軸にした規制へ、労務管理の発想そのものが切り替わる点にあります。

現場の管理指標も「月●時間以内」から「連続勤務日数や休息時間」へと変わるため、勤怠システムやシフト設計の根本的な見直しを視野に入れた、人事の「サキヨミ」の姿勢が求められています。

①【2026年10月/2028年4月施行】カスハラ防止措置の中小企業義務化

顧客や取引先からの著しい迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」から従業員を守るための防止措置義務化について、具体的な施行時期が確定しました。

  • 大企業: 2026年10月1日より義務化
  • 中小企業: 2028年4月1日より義務化

大企業は、本年の10月。中小企業は、2028年春から義務化が始まります。今から約1年半の猶予期間の中で体制を整えていくことになります。

企業に求められる対応

パワハラ防止措置と同様に、以下の仕組みづくりが急務となります。

事業主の方針の明確化と周知・啓発 「カスハラを許さない」という姿勢と、どこからがカスハラに該当するかの判定基準を社内に明示する。
相談体制の整備 被害に遭った従業員が、一人で抱え込まずに相談できる専用窓口を設置する。
被害を受けた労働者への配慮 メンタルヘルス不調への相談対応や、毅然とした態度で顧客に対応するためのマニュアル策定。

特に一般消費者と接するサービス業や医療・福祉分野などでは、従業員の精神的ケアも含めた具体的な「予防策」を用意しておくことが、採用した大切な人材の休職や流出を防ぐ防衛策となりそうです。

②【2027年10月施行確定】社会保険の適用拡大(従業員36人以上)

短時間労働者に対するセーフティネットを拡充するため、厚生年金保険・健康保険の適用対象がさらに拡大されます。2024年10月の「従業員数51人以上」への拡大に続き、2027年10月1日からは「従業員数36人以上」の企業が対象となります。

企業への影響と対策

この改正により、これまで扶養の範囲内で働くことを希望していた多くのパート・アルバイト従業員が新たに社会保険の加入対象となります。

人事担当者に求められる先回りの対応は以下の3点です。

加入対象となる従業員の早期特定 週の所定労働時間や月額賃金などの基準を満たす従業員が社内に何人いるかを正確に把握する。
丁寧な個別面談と働き方の意向確認 扶養から外れることを懸念する従業員に対し、「手取り額がどう変わるか」を試算し、今後の希望の働き方(シフトを抑えるか、時間を延ばして社会保険に入るか)を丁寧にヒアリングする。
社保加入メリットの説明 将来受け取る年金受給額がアップすることや、傷病手当金などの保障が手厚くなるメリットをわかりやすく伝える。

事前に一人ひとりと十分なコミュニケーションをとることで、施行直前での「シフト調整による人手不足」や「突然の退職」といったトラブルを防ぎ、人材の定着につなげることができます。

③【2028年10月施行確定】雇用保険の適用拡大(週10時間基準)

こちらはすでに改正雇用保険法として成立しており、2028年10月1日の施行が確定している重要な改正です。

これまで「週所定労働時間20時間以上」だった雇用保険の加入要件が、「10時間以上」に引き下げられます。これにより、週に数日だけ稼働する短時間パート、複数のアルバイトを掛け持ちする人、学生スタッフなど、非常に多くの労働者(全国で約500万人規模)が新たに雇用保険の被保険者となります。

企業への影響と対応策

週10時間(月43時間程度)で雇用保険に入る層は、月給5〜8万円程度の学生アルバイトやパートスタッフが中心です。

人事が今から準備すべきアクションは以下の通りです。

コストと手続き負荷の試算 加入対象者が一気に増えるため、会社負担となる雇用保険料の増加分をあらかじめ予算に組み込んでおく。
事務手続きフローの整備 入退社に伴う雇用保険の手続き(ハローワークへの申請等)が急増するため、管理部門の業務効率化や手続きのアウトソーシングなどを今から検討しておく。
採用時・契約更新時の説明準備 採用時の求人票や契約締結時の労働条件通知書ひな形を、週10時間基準に対応した仕様に更新しておく。

特に採用人数の多い企業や、離職率が高く入退社手続きが頻繁に発生する企業にとっては、実務の現場が混乱しないための先回りのインフラ整備が極めて重要です。

④~⑨【2027年以降施行見込み】「休息・健康確保」を軸にした労基法改正への備えと、勤怠システムの「面」の再設計

2026年6月時点で見込み段階の法改正(④~⑨)に対しては、2027年以降の施行が見込まれていることは確実です。施行が決まるまで待ち、都度バラバラに対応するよりは、早めに準備をしておくと、実務上のリスクが低減されます。

例えば、「④ 11時間インターバル確保」「⑤ 連続14日以上の勤務禁止」、「⑥ 法定休日の特定」といった労働時間に深く関わる項目は、最終的にはすべて「勤怠管理マスタの設定・アラート設計」に帰結します。

個別の改正対応として都度システム設定を追加していくと、設定同士が競合して現場のシフト作成がストップしてしまう可能性や、就業規則との不整合が生じて労使トラブルを招くケースも懸念されます。

企業が最初に着手すべきアクション
  • 1. 自社影響の一次棚卸し:
    自社の雇用形態やシフトパターンと照らし合わせ、どの論点が自社に一番大きな影響を与えるかを棚卸しする。
  • 2. 勤怠システムの仕様点検:
    現在使用している勤怠システムが、「11時間インターバルの検知」「連続勤務アラート」「法定休日特定」といった複雑なマスタ設定に耐えられる仕様かどうか、あらかじめシステムベンダーに確認(RFI)を投げておく。

システムや就業規則を「ツギハギ」にするのではなく、複数の論点を一体で扱えるよう、今のうちから「面」での再設計を視野に入れて準備することが、2027〜2028年の法改正をスムーズに乗りこなす最大のポイントになりそうです。

さいごに

2027年、そして2028年にかけて控えるこれらの法改正は、一見すると「コストの増加」や「ルールの厳格化」という厳しい逆風に感じられるかもしれません。

しかし、これらの法改正を、自社の組織をより健全にし、従業員の「働きやすさ」を担保するための前向きな変革(処方箋)と捉え直してみると良い効果を生みそうです。

「ルールが守られ、安心して健康的に働ける環境があること」は、今いる社員の流出を防ぐだけでなく、これからの採用市場において、求職者から「誠実な企業」として選ばれるための、最も強力な武器になり得ます。本記事が、法改正の波をサキヨミし、社員から信頼される魅力的な組織づくりを進めるための一助となれば幸いです。

関連記事・資料