中途採用ノウハウ、ユーザー調査、法改正情報が満載!
2026年は早くも後半戦。深刻な人手不足や物価高といった目先の脅威に触れる中、中長期的な組織運営を見据える上で避けて通れないのが「法改正」への対応です。
特に来年2027年から2028年にかけては、労働基準法の約40年ぶりとなる抜本的な見直しや、社会保険・雇用保険の適用範囲の劇的な拡大など、様々な法改正が重なる見通しとなっています。
これらを単発の事案として受け止めていると、直前になって場当たりな対応となり、現場やシステムに混乱を及ぼすリスクも。そのため今回は「人事のためのサキヨミ法改正[2027年・2028年]」と題して、2026年6月時点で、人事が先読みして備えておくべき法改正のポイントや現在の状況などを、分かりやすく解説します。
まずは、2026年6月時点で確定している事項と、議論段階である事項を一覧化していきます。自社への影響度に応じて優先順位をつけることが最初のステップになるでしょう。
| 人事が押さえるべき重要テーマ | 施行時期 / 確定度 | 自社の影響度チェック (当てはまる企業) |
人事・採用担当者が まず起こすべき具体アクション |
サキヨミ重要度 |
|---|---|---|---|---|
| ①カスハラ防止措置の中小企業義務化 | 2028年4月1日施行 ※大企業は2026年10月~ |
店舗、営業、カスタマーサポートなど、一般消費者や取引先と接する全ての企業 |
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◎ (今すぐ準備) |
| ②社会保険の適用拡大(従業員36人以上) | 2027年10月1日施行 (確定) |
被保険者数が常時36人以上となる中小企業全般 |
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◎ (今すぐ準備) |
| ③雇用保険の加入対象拡大(週10時間以上) | 2028年10月1日施行 (確定) |
短時間パート、アルバイト、学生スタッフを多く雇用している企業 |
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◎ (今すぐ準備) |
労働基準法の大改正案は、2026年の通常国会への提出が見送られる見通しとなりました。急激な規制強化による中小企業の人手不足への影響や、勤務間インターバル等のシステム対応の難しさといった実務上の壁が、労使間での慎重な調整を必要としたためです。
しかし、法改正が延期されたとはいえ、労基署による過重労働への指導は年々厳格化しています。将来の施行を見据え、現行法の範囲内でも生じているリスクの洗い出しが急務です。
また、今回の改正議論の本質は、これまでの「上限時間で縛る規制」から、勤務間インターバルや連続勤務制限など「休息と健康確保」を軸にした規制へ、労務管理の発想そのものが切り替わる点にあります。
現場の管理指標も「月●時間以内」から「連続勤務日数や休息時間」へと変わるため、勤怠システムやシフト設計の根本的な見直しを視野に入れた、人事の「サキヨミ」の姿勢が求められています。
顧客や取引先からの著しい迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」から従業員を守るための防止措置義務化について、具体的な施行時期が確定しました。
大企業は、本年の10月。中小企業は、2028年春から義務化が始まります。今から約1年半の猶予期間の中で体制を整えていくことになります。
パワハラ防止措置と同様に、以下の仕組みづくりが急務となります。
特に一般消費者と接するサービス業や医療・福祉分野などでは、従業員の精神的ケアも含めた具体的な「予防策」を用意しておくことが、採用した大切な人材の休職や流出を防ぐ防衛策となりそうです。
短時間労働者に対するセーフティネットを拡充するため、厚生年金保険・健康保険の適用対象がさらに拡大されます。2024年10月の「従業員数51人以上」への拡大に続き、2027年10月1日からは「従業員数36人以上」の企業が対象となります。
この改正により、これまで扶養の範囲内で働くことを希望していた多くのパート・アルバイト従業員が新たに社会保険の加入対象となります。
人事担当者に求められる先回りの対応は以下の3点です。
事前に一人ひとりと十分なコミュニケーションをとることで、施行直前での「シフト調整による人手不足」や「突然の退職」といったトラブルを防ぎ、人材の定着につなげることができます。
こちらはすでに改正雇用保険法として成立しており、2028年10月1日の施行が確定している重要な改正です。
これまで「週所定労働時間20時間以上」だった雇用保険の加入要件が、「10時間以上」に引き下げられます。これにより、週に数日だけ稼働する短時間パート、複数のアルバイトを掛け持ちする人、学生スタッフなど、非常に多くの労働者(全国で約500万人規模)が新たに雇用保険の被保険者となります。
週10時間(月43時間程度)で雇用保険に入る層は、月給5〜8万円程度の学生アルバイトやパートスタッフが中心です。
人事が今から準備すべきアクションは以下の通りです。
特に採用人数の多い企業や、離職率が高く入退社手続きが頻繁に発生する企業にとっては、実務の現場が混乱しないための先回りのインフラ整備が極めて重要です。
2026年6月時点で見込み段階の法改正(④~⑨)に対しては、2027年以降の施行が見込まれていることは確実です。施行が決まるまで待ち、都度バラバラに対応するよりは、早めに準備をしておくと、実務上のリスクが低減されます。
例えば、「④ 11時間インターバル確保」、「⑤ 連続14日以上の勤務禁止」、「⑥ 法定休日の特定」といった労働時間に深く関わる項目は、最終的にはすべて「勤怠管理マスタの設定・アラート設計」に帰結します。
個別の改正対応として都度システム設定を追加していくと、設定同士が競合して現場のシフト作成がストップしてしまう可能性や、就業規則との不整合が生じて労使トラブルを招くケースも懸念されます。
システムや就業規則を「ツギハギ」にするのではなく、複数の論点を一体で扱えるよう、今のうちから「面」での再設計を視野に入れて準備することが、2027〜2028年の法改正をスムーズに乗りこなす最大のポイントになりそうです。
2027年、そして2028年にかけて控えるこれらの法改正は、一見すると「コストの増加」や「ルールの厳格化」という厳しい逆風に感じられるかもしれません。
しかし、これらの法改正を、自社の組織をより健全にし、従業員の「働きやすさ」を担保するための前向きな変革(処方箋)と捉え直してみると良い効果を生みそうです。
「ルールが守られ、安心して健康的に働ける環境があること」は、今いる社員の流出を防ぐだけでなく、これからの採用市場において、求職者から「誠実な企業」として選ばれるための、最も強力な武器になり得ます。本記事が、法改正の波をサキヨミし、社員から信頼される魅力的な組織づくりを進めるための一助となれば幸いです。