- コロナ後の「企業選びの軸」について、1万人超の求職者が回答
- コロナ後、企業選びの軸が「変わった」求職者は3割。変化した人が多い業種は「コンサル」「IT」。
- 特に重視するようになった軸のトップは「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」
転職市場は売り手市場となり、求職者優位となる中で中途採用を成功させるには、今の求職者の気持ちを理解することが必要です。そこで今回は、「アフターコロナの転職者心理」と題して、1万人を超える求職者の「企業選びの軸」や、「希望条件」の変化をご紹介します。
厚生労働省が発表した2023年2月の有効求人倍率は、前月から0.03ポイントダウンし「1.41倍」になりました。コロナで落ち込んだ雇用情勢は、2022年後半から回復の途上にありましたが、物価上昇などの影響での賃上げ対応など、新たな雇用にやや足踏みが見られています。
とはいえ、インバウンドの回復や国内観光の活性化に伴い、宿泊業・飲食サービスでの求人は、対前年同月比で37%超の増加。次いで教育・学習支援業では23.7%増、卸売・小売業でも11.1%増と人手不足の状況が加速しています。
就業地別に見ると、福井県がもっとも高く「1.91倍」。一方、最も低いのは神奈川県で「1.10倍」となりました。業種だけでなく、求人の就業地との掛け合わせで採用難易度は変わってきますので、中途採用をご検討の際は、一度ご確認ください。
■ アンケート手法:WEBアンケート
■ アンケート期間:2022年12月26日~2月1日
■ 有効回答数:10,618人
※『エン転職』会員に対するアンケート結果を元にしています。
「エン転職」を利用する求職者1万人超にアンケートを実施。まずは、転職の企業選びにおいて「大事にしている軸」をお聞きしました。1位は「自分にできそうか」63%、次いで「希望の条件(勤務時間・休日休暇など)があるか」54%、「年収アップできるか」49%と続きました。
特に「自分にできそうか」は、20代・30代で多くなっており、多くの求人を見る中での応募のポイントになります。若手の採用を実施する場合には、どのようなスキルを持った人を求めるか、歓迎する経験などの情報提示が大事になりそうです。
また、「希望の条件」や「年収アップ」を重視する人は、時勢柄増えており、求職者優位になった売り手市場において、企業側は働き方や勤務条件の多様化、提示年収アップを検討せざるを得ない状況と言っていいでしょう。
ここからは、長いコロナ禍を経て、求職者の志向に変化があったか見ていきます。
まず、この数年で「企業選びの軸が変わったか?」と聞きました。その結果、全体の33%が「変わった」と回答。大体3人に1人の求職者は、企業を選ぶ軸に影響を受けていることがわかります。
年代別では、家庭や小さいお子さんを持つ方が多い「30代」がもっとも影響を受けており、4割近い人が、企業選びの軸が「変わった」と回答しています。
業種別では、「変わった」と回答した人がもっとも多かったのは「コンサルティング・士業」43%。次いで、「IT・通信・インターネット」40%となっています。コロナによって、テレワーク導入など働き方を変えた企業が多い業種で働く人ほど影響があるように見えます。
また、給仕ロボットの導入、無人レジ、キャッシュレス支払いなどの導入が進んだ「サービス(飲食)」でも、37%の人が「変わった」と回答。一方、「運輸」「建設・設備」など、どうしても人力が必要な業種では、「変わった」と回答する人は少なくなっています。
「コロナ禍を経験し、企業選びの軸が変わった」と回答した方に、具体的に何を重視するようになったかを伺いました。
第一位は「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」51%。なんと半数以上がテレワークや副業のある会社を重視するようになっていることが見て取れます。年代別に見ると、20代・30代で6割近い人が「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」を軸に変更したと回答しています。
次いで、「希望の条件(勤務時間・休日休暇など)があるか」が32%、「業績が好調か」24%と続きました。具体的なコメントもご紹介します。
- 前職でテレワークに初挑戦した際、自宅のネット環境が悪くて業務に苦労した。現在転職活動中だが、次の職場でテレワークをするなら引っ越しも検討したい。それなら住宅手当がついている職場も探してみたいという具合に、企業選びの視野が広がるようになった。(30代女性)
- これまでは子供が小さいこともあり、通勤することが前提で、自宅から近くてアクセスが良く、時短で働ける求人ばかり見てきたが、特殊な職種ではなくても、フルタイムで完全在宅可能な求人が増えたため求人を探しやすくなった。(30代女性)
- テレワークの有無、出社頻度や社内コミュニケーションの内容を見るようになった。(40代男性)
- テレワークにより、空いた時間でスキルアップや趣味の時間を大切にすることを実践できたため、自分の時間を大切にする働き方をしたくなった。(30代男性)
- あまり混雑している環境が苦手になり、時差通勤やフレックスタイム制やテレワークをやっているかを確認します。(40代女性)
- 現職が医療関係で、コロナ禍の大変さから休みを大事にしたいと思った。(20代女性)
- 現在勤めている会社が新型コロナウイルスの感染拡大で一時業績が上がったが、コロナが落ち着いてきている今は業績が下がり続けているため。(20代男性)
- 景気の影響が大きい企業とあまり影響を受けない企業があることに気が付きました。家庭があるのでできるだけ安定した企業が良いと思っています。(30代女性)
- コロナ時、飲食業界で働いていて大打撃を受けたので、いわゆる安定を重視するようになりました。(30代男性)
ここからは、アフターコロナにおいて求職者が企業選びをする上で、参考にしている情報源をご紹介します。
自身の「企業選びの軸」に合致する企業かどうか確認するための情報源として、もっとも多く支持されたのは「転職サイト」となりました。次いで、「企業ホームページ」と「会社クチコミサイト」と続き、現在の転職活動における3大情報源と言って過言ではない結果になりました。
「転職サイト」の求人で良いと思ったのに、「企業ホームページ」を見たら情報が少なかった。「転職サイト」の求人に応募してみたものの、「会社クチコミサイト」を見たら、求人で書いていることとかけ離れた従業員クチコミがあった等、求職者からよく聞かれる声となります。
そのため、企業が中途採用を実施する際には、3大情報源の整合性を取ることや、情報の過不足がないか、求職者目線でチェックすることをオススメします。
- 働く社員の声やサイト運営の方のインタビューなどが掲載されていて、同じ業界や同じ職種であっても、それぞれの企業カラーや特徴、大切にしていることが分かりやすく大変参考になります。(30代女性)
- 転職サイトのスタッフさんがインタビューした記事や、企業の先輩方の声が色々詳しく載っているところが参考になりました。(20代女性)
- 企業ホームページがアピールする事業の分野は、当該企業が自信を持って対外的にアピールできる分野であるためとても参考になる。(20代男性)
- 企業の理念や、社長の考え方を知る事が大事だと思っています。やはり、トップの方の考え方で会社の形は作り上げられている部分も大きいため、そこで自分の考え方と一致するかどうかなどをしらべるようにしています。(20代女性)
- 実際に面接に行き、良くない印象を持った企業は口コミサイトの評判も良くないことが多かったので口コミサイトは鵜呑みにし過ぎない程度には参考になっている。(20代男性)
- 会社の規模で選ぼうとしていたが、口コミサイトを見た結果、自分の元々の職場の雰囲気に似ていることが分かり応募を取り止めた。(20代女性)
前述の情報源をもってしても、調べきれなかった情報についても聞きました。最も多かったのは「職場の雰囲気・社風」で、年代問わず半数以上のわからなかったと回答しています。なかなか文字情報では伝わらない点でもあり、面接時に社内見学などを組み込んでもらえるとありがたい、という声も散見されました。
また、「社員の定着率」や「仕事内容」に関しては、入社後に知ったり、ズレがあることがわかったりすることで負のギャップ感情が起きやすい情報です。
定着率ひいては離職率があまり良くないという事実があったとしても、入社前に知り、面接などで「会社としてどう改善しようとしているか」を説明されることで、納得して入社する求職者も少なくありません。
また、「仕事内容が聞いていた話と違った」という不満は、多くの求職者から聞かれる転職のきっかけです。こちらも事前に正確な情報を提示し、誤解やギャップを生まないことが、採用成功はもちろん入社後の定着に繋がっていきます。
- リモートの面接だと、職場の雰囲気やトイレ・オフィスが汚いなど、そういう具体的な環境がわかりにくい。(30代男性)
- 経営者が前面に出ている企業とそうでない企業があり、経営者があまり表に出てこない企業は、会社の方針・雰囲気がわかりづらい気がして信頼できない。(30代女性)
- 仕事内容などは転職サイトなどでわかるのですが、社員の定着率やリアルな昇給の実態はなかなか難しいです。(30代女性)
- 今の勤め先の離職率がかなり高く、定着率(あるいは離職率)が分かっていれば入社しなかった。(30代女性)
- 事務職で入ったが蓋を開けてみたら全く違う職種が含まれていた。(20代女性)
- 求人票でさわりは分かっても、全項目において詳細までは踏み込めないと感じている。(30代女性)
特集「アフターコロナの「求職者心理」」は、いかがだったでしょうか。活況を取り戻し始めた転職市場の中で中途採用を実施する際は、ぜひ一度本特集とアンケートを見返し、採用戦略立案にお役立てください。