- 2人に1人の転職者が、ホンネの転職・退職理由を企業に伝えていない。
- 転職・退職理由のタテマエ「仕事の領域を広げたい」、ホンネは「報酬をあげたい」が最多。
- 転職後に満足度が高くなる(定着・活躍に繋がる)人が多い、転職・退職理由とは?
中途採用の面接官の経験がある方であれば、毎回聞くことになるこの質問。転職(退職)したいと思った理由を聞くことで、応募者が将来的に実現したいことは何か、現状の不満点や改善したいと思っているポイントを探る。また、自社への転職後に同じ理由で退職しないか確認することも。言ってみれば、面接の本題に入るための起点になる質問と言えます。
しかし、質問に対して、妙にスラスラと答える、ポジティブな回答に終始するなど、違和感を覚えた経験のある方も多いのではないでしょうか。実はその違和感は、「タテマエ」の転職・退職理由に感じたのかもしれません。そこで今回は、人事担当者が知っておきたい転職・退職理由の「ホンネ」と「タテマエ」、及び「転職後の満足度との関係性」について転職コンサルタントに聞きました。ぜひ参考にしてください。
まずは、転職者と日々相対する転職コンサルタントに対して、「転職者が企業に伝える転職理由と本当の転職理由が異なるケースはありますか?」と伺いました。結果は半数が「5割以上異なる」と回答。なんと転職者の2人に1人は、本当の理由を企業に伝えていないことが分かります。
面接回数で考えれば、2回に1回は事実とは違うことを受け答えされている可能性も。少し驚く数値ですね。では、いったい転職・退職理由にはどんなホンネとタテマエがあるのか、確認しましょう。
転職者が企業に伝える転職・退職理由(タテマエ)と、本当の転職理由(ホンネ)を、転職コンサルタントに伺いました。
転職者が企業に伝える転職・退職理由(タテマエ)で、もっとも多かったのは、「仕事の領域を広げたい」68%。次いで「専門スキルや知識を発揮したい」59%。どちらもポジティブな転職・退職理由ですね。3位以降に「会社の将来に不安を感じる」「今後成長できるイメージが持てない」という転職・退職理由が続きます。
一方、本当の転職理由(ホンネ)でトップだったのは「報酬をあげたい」57%。次いで「上司と合わない」「職場の人間関係が合わない」「評価に納得できない」が同率の48%となり、「会社の将来に不安を感じる」などが続いています。
もちろん転職・退職理由は一つではなく、多くの項目が混ざり合っているものですが、企業に伝える「タテマエ」と、転職コンサルタントが聞いた「ホンネ」はギャップがあり、言える話と言いにくい話と、転職者が使い分けていることが見て取れます。ベテラン人事担当者であれば納得する結果。しかし、まだキャリアが浅い担当者は驚きの結果かもしれません。覚えておきたいポイントです。
ここからは、転職後に満足度が高くなる(定着・活躍に繋がる)人が持つ傾向のある転職・退職理由と、逆に満足度が低くなる傾向のある転職・退職理由をご紹介します。転職を手伝い、転職後の経過も見ている転職コンサルタントならではの回答をぜひご確認いただくとともに、面接での応募者の見極めの参考にしてください。
転職後に満足度が高くなる(定着・活躍に繋がる)人が持つ傾向のある転職・退職理由。もっとも多かったのは「専門スキルや知識を発揮したい」44%。次いで、「報酬をあげたい」42%、「仕事の領域を広げたい」31%となりました。スキルアップや報酬アップなど、成長に関わる内容をホンネの転職・退職理由に挙げる人が、転職後上手くいきやすいようです。
- ●仕事内容や仕事の本質的な事柄、成長したい・高い報酬を得たいという貪欲な気持ちがあると、困難な環境に遭遇しても乗り切れる可能性が高いと思います。
- ●自身のやりたいことが明確な方は、その理由で会社選びをされて決定されるので、うまくいくケースが多いと感じられます。
- ●入社後の多少のミスマッチは報酬によって納得いただけるケースが多く、逆に報酬に相違が起こると早期離職のリスクが高くなるため。
- ●理由に対して明確な結果が感じられるため
- ●やりたい事が明確なので、事前に把握しやすいから。
- ●最終的には自己成長ができることにより満足度が高まる。
逆に、転職後の満足度が低くなる傾向が出やすい人の挙げる転職・退職理由は「上司と合わない」42%、「職場の人間関係が合わない」40%。人付き合い・人間関係での問題が転職・退職理由となる場合は、転職後にも満足度は低くなる傾向があると感じるコンサルタントが多いようです。
- ●人間関係においては定性的な基準であり、理想像も個人ごとに異なるためそこに不満を持たれている方は転職により問題解決につながる可能性は低いと感じるため。
- ●今度の職場も上司と合わなかった、人間関係がよくなかった、と思うケースがあるため(本人に問題がある可能性あり)。
- ●人間関係の悪さは自らに起因しているところもあるため、他責で自己改善が図れない方は結局不満を持つ。
- ●人間関係でやめられる方の半数以上は同じ理由で転職をする可能性が高いから。
- ●お金重視なのに、給与がなぜ出るのかを理解していない人は転職しても失敗する。
- ●「給与が高い=生産性が高い、売上・利益が高い」を理解していない人が意外に多い。
- ●相場観や家庭の事情があるわけではなく、単に「今よりいいところ」を狙う人は、大体満足することはない。
- ●報酬や環境だけにこだわるため全体像が見えずに転職すると同じことが起こる。
- ●人間関係・評価に納得できない人は、自身に問題がある事を自覚していないから次の会社でも同じような不満を持つ。
- ●評価の不満はどこに行っても解消できないと思う。
今回のアンケート調査では、採用活動において応募者が話す転職・退職理由の約半数は、ホンネではないことがわかりました。人事、面接担当者としては「無理してホンネを聞かなくても…」と思われるかもしれませんが、入社後の定着や活躍にも影響があるとすれば、ホンネを聞き出す質問やノウハウは持っておきたいですね。
「現職(退職済みであれば前職)で一番お世話になった方はどんな方ですか?
今、その方に転職について相談したら、何と言われると思いますか?」
なかなか転職・退職理由を聞きだすことが難しい場合は、第三者の視点を使って質問する方法が有効です。前述の通り、応募者は転職・退職理由に関する質問に対して、必ず回答を用意しています。思ってもいなかった第三者の視点を投げかけることで、社内での人間関係も見える効果もあり。有効な質問です。
「この条件があったら、現職に残っても良いなと思うものを教えて頂けますか?」
仕事内容、昇給、昇進、給与、人間関係など、何がネックになっているかを逆から聞いてみる質問です。辞める理由ではなく、残る理由を聞くため、ホンネが出やすいと言われています。
「転職をすることで、当社に期待することはどのようなことですか?」
こちらは入社後の期待しているポイントを聞く質問です。仕事内容、昇給、評価、給与など、何が転職の軸になっているかを見極める質問になります。自社や応募している仕事内容に関する理解度なども確認でき、逆に勘違い、誤解などがあれば補足や訂正もできるため、入社後の「こんなはずじゃなかった…」を防ぐ効果のある質問です。ぜひ試してみてください。
転職・退職理由のホンネとタテマエ、今回の特集はいかがだったでしょうか?なかなかホンネを把握することは難しそうですが、入社後の定着や活躍につながっていると考えれば、人事担当者として掘り下げて聞いてみる価値はあるはずです。 その他、面接質問集( https://partners.en-japan.com/special/mensetsu/ )もぜひ参考にしてください。