- 2021年7月、全国の有効求人倍率は「1.15倍」。前月から0.02ポイント上昇
- 就業地別の有効求人倍率、最高は福井県「1.95倍」、最低は沖縄県「0.84倍」
- 東京・愛知・大阪・福岡の職種別有効求人倍率(10職種)にも注目!
厚生労働省が発表した2021年7月の有効求人倍率は「1.15倍」。前月から0.02ポイント上昇しました。各地への緊急事態宣言・まん延防止措置の影響は続くものの、有効求人数が3ヶ月ぶりに上昇しています。一方、ワクチン未接種者の転職控えなどから有効求職者数が微減したとも見られ、相対的に有効求人倍率が上がっています。
産業・業界別では、製造業の回復が著しく求人も増加。一方、コロナ禍で時短営業などの影響を受ける宿泊・飲食サービス業は依然厳しい状況です。
中途採用市場を見ると、「未経験者採用」を謳う求人が増加。「経験者採用」が多かった買い手市場から、もう一度「未経験者」採用の波が回帰し始めています。求職者側も、オンライン選考の有無や、テレワーク導入有無など企業のコロナ対応を確認するなど、企業とのマッチングや入社後のフィッティングが難しい局面も散見されています。中途採用の難易度は、これまで以上に上がると想定されます。
全国47都道府県の有効求人倍率を確認していきます。2021年7月から遡ってコロナ前の2019年まで3年の推移を見ていきましょう。
都道府県別の有効求人倍率(就業地)は、地域差がとにかく大きくなっています。2021年7月で、最も高かったのは福井県で「1.95倍」となりました。一方、最も低かったのは沖縄県で「0.84倍」。福井県とは1ポイント以上の差となっています。
また、東京都は「0.91倍」、神奈川県は「0.95倍」、大阪府は「0.94倍」と、1倍を下回る結果に。その他、愛知県では「1.2倍」、福岡県も「1.0倍」と1倍付近に留まっています。
※都道府県別の有効求人倍率は、「就業地別」の調査結果データを採用しています。「受理地別」の調査結果と比較して、より各都道府県の就業数に即した数値となっております。ご了承ください。
代表的な10職種の有効求人倍率について、2年前からの推移を確認していきましょう。2021年7月を見ると、10職種中6職種で、2020年7月に下がった有効求人倍率が上昇していることが見て取れます。
一方、2020年7月よりも有効求人倍率が下がっているのは、緊急事態宣言・まん延防止措置による店舗の休業や時短の影響を大きく受けた「商品販売の職業」の他、「介護サービスの職業」、「ITエンジニア」、「クリエイター」職種となっています。
次からは、東京・名古屋・大阪・福岡地区の職種別有効求人倍率を確認していきます。
都道府県別の有効求人倍率では、1倍前後となる南関東ブロック。その中でも、7月からの緊急事態宣言の影響を大きく受けた東京都の状況を確認していきます。
東京労働局が発表した2021年7月の求人・求職バランスシートでは、10職種中8職種で全国平均の倍率を上回っている状況です。特にコロナ以前は「9倍以上」となっていた「接客・給仕の仕事」が「1.37倍」まで低下。有効求職者数共も大幅に少なくなっていることから、異業界・異職種への転出をしていることが見て取れます。
「介護関連」等での未経験者採用はコロナ禍でも実施されていましたが、今秋以降、各業界で「未経験者採用」を復活させる動きもあり、「介護関連」及び、業界問わず「未経験者採用」は再び取り合いの様相に。採用難易度の上昇が見込まれます。
関東と比較して、「1.2倍以上」の有効求人倍率に回復した東海3県。特に岐阜県は「1.5倍」と全国の中でも上位の有効求人倍率に回復。採用難易度が高まっています。愛知県は自動車の生産回復があり、製造業を中心に求人が回復。非製造業では運輸業、宿泊・飲食サービス業が回復しています。
愛知労働局が発表している職種別有効求人倍率では、宿泊・飲食サービス業の回復に伴い、「接客・給仕の職業」が全国平均を大きく上回り「3.07倍」となりました。有効求職者も少なく、採用が難しい状況が見て取れます。8職種では全国平均を上回っていますが、「IT関連」、「運搬・清掃等の職業」の2職種が全国平均を下回る状況です。
近畿エリアの有効求人倍率は、奈良県が「1.35倍」、京都府が「1.11倍」、兵庫県が「1.06倍」と、いずれも前年を上回りました。一方で、大阪府のみ前年を下回る有効求人倍率となっていますが、企業からの求人は堅調に回復しているものの、給付金制度利用のためハローワークへの登録が増え、有効求職者数が増えたことが要因です。
大阪労働局が発表した大阪府の職種別有効求人倍率では、「営業の職業」、「商品販売の職業」、「接客・給仕の職業」、「建築・土木技術者等」、「美術家、デザイナー等」、5職種で全国平均を下回っている状況です。こちらも求職者数が増えていることが影響していますが、「未経験者採用」を実施する企業に多く応募してくる可能性があり、見極めなどを含めて採用は難しくなる可能性があります。
前年から有効求人倍率が、0.03ポイント上昇した福岡県。産業別に見ると、建設業や製造業が好調でしたが、卸売・小売業では減少しています。夏休み前に宿泊・飲食サービス業の求人数が増加したものの、酒類を提供する居酒屋などは時短要請の影響もあり、求人数は減少しています。
福岡労働局が発表した職種別の有効求人倍率を見ると、「情報処理・通信技術者」、「自動車運転の職業」、「運搬・清掃等の職業」が全国平均を超えています。一方、他7職種は全国平均を下回っている状況です。
8月17日から始まった緊急事態宣言の影響がどこまで続くのか予断を許さないという発表もあり、引き続き状況を見ながらの採用が続くでしょう。
2021年下半期向け「採用難易度レポート」は、いかがだったでしょうか?コロナの影響が長引くものの、採用市場は「未経験者採用」の復活など、じわじわと回復している状況です。2021年度の下半期、中途採用を実施される場合は、ぜひ本レポートを、採用戦略の立案にお役立てください。