- コロナ禍の現在、有効求人倍率は低下し続けるも「1倍」台を堅持。
- 求職者は慎重になっている?辞退経験が「ある」求職者は67%→55%に減少。「1社」の辞退が増加。
- 選考辞退が起きやすいタイミングは、「面接前の辞退」が最多。エピソードもご紹介。
厚生労働省が発表した2020年10月の有効求人倍率(季節調整値)は「1.04倍」。前月を0.01ポイント上回りました。求人倍率「1倍」台を堅持。
求人倍率の年間推移を見ると、2013年~2014年頃の数値と近似であり、有効求人倍率の底となったリーマンショック後の2009年頃と比較すれば、倍程度の数値となっています。
コロナ第3波の状況次第で、また変化が起きるかもしれませんが、本記事を作成している12月時点では経済は動いており、新規求人数も回復。求職者の動きも活発化し始めています。
その結果、聞こえてきているのが「また応募者の選考辞退が増え始めた?」という人事担当者の声。コロナ禍の影響は、選考辞退にどんな影響を及ぼしているのか、調査しました。
現在、転職活動をしている、約2235人の求職者へアンケートを実施。選考辞退をした経験の有無を伺いました。選考辞退をしたことが「ある」と答えた人は55%。2017年に実施した同調査では「ある」と答えた人は67%であり、辞退そのものは大きく減少していることがわかります。
有効求人倍率が低下する中、多くの求職者は慎重になっているとも見て取れます。
同時に1人あたりの辞退社数の変化も確認していきます。
1人あたりの辞退社数を見ると、もっとも多かったのは「1社」42%。2017年と比較して3ポイントの増加です。伴って、「複数社」の辞退は低下。全国の求人数が少なかった直近半年においては、やはり慎重に応募先を探し、闇雲に企業へ応募しない求職者像が見えてきます。
【調査概要】
■調査方法:インターネットによるアンケート
■有効回答数:2235名
■調査期間:2020年11月6日(金)~2020年11月12日(木)
選考辞退が発生しやすいタイミングは、3つです。
- 1書類選考~面接日当日までの期間に発生する面接前の辞退
- 2面接を実施した後の辞退
- 3採用が決まって、内定を出した後の辞退
では、上記3つのどのタイミングで辞退をしたことがあるかを聞いたところ、もっとも多かったのは「面接前の辞退」となりました。
65%となり、以前と変わらず最多となっています。応募から面接前までに、選考に進むか否かの大きな壁があることが見て取れます。
しかし、多くの場合、辞退した理由を聞けていないはずです。ここからは辞退理由を確認していきます。
面接前の辞退理由で、もっとも多くの回答を集めたのは、以前と同様「応募後に再考し、希望と異なると判断した」でした。
企業側としては、きちんと検討してから応募して欲しいという気持ちになりますが、求人情報の文量・内容によって判断に満たない場合、職種・業務内容がわかりにくい場合もあり、もし面接に辿りつく応募者が少ないとお感じの企業においては、求人情報やその他クチコミなども含めて、一度点検してみることをお勧めします。
また、コロナ禍において、「オンラインではなく対面の面接だったため(コロナ対策されていないため)」という方も5%いらっしゃいました。
企業の安全面もチェックされるポイントになっており、辞退率が高く、面接のオンライン化がまだの企業は早い対応が必要でしょう。
一方、「オンライン面接」を技術的な理由・不慣れという理由で辞退される方もいらっしゃるため、どちらも選択できると良さそうです。
- ●合否に関わらず1週間以内に必ず連絡しますとの返答であったが、1週間以上経過しても連絡がないため、約束を守らない信用のない会社であると判断したため。
- ●応募後に業務内容についてどういうものなのかを調べ、思い描いている業務内容ではないと気づいた。
- ●希望する職種、待遇のスカウトメールが来たが、社長について検索したところ社長本人と思われるSNSアカウントで政治的な極端なツイートを繰り返していたため。
面接後の辞退理由で多かったのは、「面接で詳しく知った仕事内容が希望と合わなかった」、「面接で知った勤務地・給与条件が希望と合わなかった」。
実際に面接で話を聞いてみたら、希望する仕事内容・勤務地・給与と異なっていた、という声が大半を占めています。面接に至るまでに、情報が足りていないか、誤解を生む表現になっていないか、はたまた現場の面接官と人事担当者の認識違いが起きていないか、など点検しておく必要があるでしょう。
また、「面接官の行動や態度が悪かった」という理由も散見され、法律上聞いてはいけない質問をされた、説教された、パワハラ・セクハラなどを受けたという声も。
評判があっという間にネットで拡散される現在、選考辞退を防ぐだけではなく、風評被害も防ぐため、面接官の行動や態度もチェックしていきましょう。
- ●業務内容は希望通りでしたが、勤務時間帯や物理的(業務に自家用車を使用)に難しい状況であった為。
- ●面接中にパワハラがあった。
- ●このご時世に一次面接でリモート面接とならない企業は、考えが古い経営者か、ブラック企業と思われる。
企業として、もっとも痛い選考辞退が「内定後の辞退」です。時間もコストもかけてせっかく出した内定後のまさかの辞退。
もっとも多かった理由は、「勤務地・給与など条件の折り合いがつかなかった」。半数近くが条件面ですり合わなかったことを内定辞退の理由にしています。
求職者からは、「条件が最後の最後に提示される」ことや、「条件提示もなく内定取得を促す企業が多々ある」ことにも不満の声が上がっています。
内定後の辞退を防ぐためには、可能な限り早い段階で自社の出せる条件や、応募者の希望条件とのすり合わせが必要です。
また、「他社での選考が通過した・内定が決まった」が17%。選考している最中は、他者にも応募しているという事実を見落としがちです。
他社の選考状況次第で、自社への志望動機が変動してしまうため、「この人」という応募者の選考状況は、聞いておきたいポイントです。
どうしても自社の選考が長引く場合や、他社の方が早いとわかった場合は、自社の選考期限を提示したり、逐次応募者へ連絡をしたりすることも一手です。
- ●自分の中でココに決めようと言う決定打が無かった。
- ●あまりにもスムーズに進んだ事。
- ●内定した他社の条件が良かった。
選考辞退は、タイミングごとに様々な理由があることがおわかりいただけたでしょうか?
しかし、ほとんどの場合は企業側で選考の改善をすることで好転する理由がほとんどです。
その際に参考になる、求職者の「辞退を決めたエピソード」と、「入社を決めたエピソード」をご紹介します。
せひ、自社の選考の振り返りや改善にお役立てください、
- ●面接まで、メールでやり取りをしていた方が面接官でしたが(メールでは普通でした)、面接では始終、機嫌が悪そうにされており殆んど会話がありませんでした。
- ●複数いる面接官のうち、一人が居眠りをしていた。
- ●面接官が明らかに資料を読んでおらず、別の人物と勘違いした質問が多々あった。
- ●最終面接で、面接官の人に「履歴書の写真と実際の顔違うね。履歴書の写真変えた方がいいよ」と言われ、気持ち悪いなと思いました。
- ●コロナ禍の中で面接官の複数名がマスクを着用しておらず、細かい点を気にする自分とは社風が合わないと感じた。
- ●希望と異なることが多すぎるし、何を拝見してスカウトをしてくるのかが、よく分かりません。
- ●あきらかに希望職種や業種でないもので何度もメールが着た。デスクワークを希望しているのに、営業やドライバー、飲食店店長など負担の重い職種のスカウトが来て感覚を疑うことが何度かあった。
- ●希望と全く違う業種、業界からのスカウトだったため。またスカウトの文章の言葉使いなどから良い印象が得られなかった。
- ●求人情報に記載がない、または書いてあるが面接のなかで、給料や転勤ありなどの部分の食い違いが多すぎた。
- ●面接中に求人条件(雇用形態や職種、給与、休日など)が異なるため確認したら、あくまで今後の希望や展望であってこうしたら応募が集まるので…と言われたことで他にも嘘があると確信して辞退した。
- ●求人には運営拡大のための人員募集と書いてあったが、面接で話を聞いたところ直近で複数人退職したことによる欠員補充だった。
- ●社内案内をして頂きましたが、挨拶もなく陰気な雰囲気を感じたからです。
- ●面接で訪問した際、事務所にいる人が誰も挨拶をしないし、訪問して来ている事に気付いているのに、誰も対応をしなく、一番近くにいた人に声をかけると、あからさまに嫌な顔をされ雰囲気の悪い会社だと判断した。
- ●概ね希望の仕事内容でしたが、面接時に部屋へ案内するスタッフや面接官等、皆愛想がなく、オフィスの雰囲気も暗く感じた。
- ●「ネット上の評価を真に受けてはいけない」と思い面接も受けましたが、評価通りの印象を受けましたので辞退を決意しました。
- ●応募前に一応評判を調べたつもりだったが、改めて調べてみるとよくない噂が多く、不安になった。
- ●一緒に、頑張っていこう!と言われ、入社を歓迎してもらっていると感じたとき。支店長自ら、俺が半年で育てるから、来てくれと言われた。
- ●実際に職場を見せてもらって、業務の流れを説明してもらい、イメージがしやすかったので、入社を決めました。
- ●最終の役員面接の際、面接が苦手な私のために人事担当の方が、事前に練習をしてくださった。
- ●社長自ら、個人携帯から電話をしていただき、内定をいただいたこと。
- ●面接時、事務所に行った時にスタッフの方々の明るく大きな声で「こんにちは」と挨拶があったことから、職場の雰囲気が良いと判断した。
- ●面接の雰囲気。過去の転職のことは聞かれず、当社で働いたと仮定した質問で、とても前向きな印象で雰囲気が良く、こちらでぜひ働きたいと思いました。
- ●面接後速やかに内定通知がきた。他の応募者と天秤にかけられてないことに好感を持った。
- ●代表の熱意や対応、社内の雰囲気が良かった。給与の提示額が希望に満たなかったが、働いてみたいなという気になった。
- ●コロナ禍のウェブ面接でしたが、現場の方と面接の場を設けて頂き、人の雰囲気が実際に感じ取れたので入社を決めた。
いよいよ2020年も終わりが見えてきました。年内はもちろん2021年もコロナの影響はまだまだ続きます。その中で、中途採用を行なうにあたっては、応募者に逃げられ、辞退されてしまうことは今まで以上に避けたいポイントです。本特集によって、面接前、面接後、内定後、それぞれの辞退理由を確認し、貴社の採用活動の改善策が見つかれば幸いです。ぜひご参考ください。