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総力特集
月刊「人事のミカタ」
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2020/11/04 UP
コロナ禍、重要になる中途入社者の定着・活躍。有効な施策とは?
オンボーディング入門(増補版)
要約すると
  • 社員の離職防止、定着・活躍に有効な「オンボーディング」とは?
  • 中途採用者の「オンボーディング(定着・戦力化の取り組み)」に力を入れている企業41%。
  • 定着化には「人事との面談」、戦力化には「メンターなどの支援」が影響。
これはと思って採用した人材の早期離職は痛いもの。代わりの人員を採用しようにも、採用コストがコロナ禍の今は捻出しづらい…と頭を悩ます人事担当者は多いでしょう。
そこで今回は、中途入社者の早期離職に効果がある「オンボーディング」についてご紹介します。改めて今、注目されるオンボーディングについての解説と、最新企業調査の分析から見えた有効な取り組みまで、ぜひご参考ください。
人事のミカタ
編集長 手塚伸弥
社員の離職防止、定着・活躍に有効な「オンボーディング」とは?

オンボーディングとは、採用した社員の「受け入れ~定着・戦力化」を早期に行なうための施策のことです。※「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」から派生した言葉。

即戦力として中途入社した人材が、早期離職してしまうことや、離職はしなくても企業文化等にすぐに馴染めず、期待されたパフォーマンスを上げるまでに時間がかかることが、多くの企業で問題視されるようになったことで、注目され始めました。

中途入社時の研修後、現場任せの教育をするのではなく、継続的なサポートを行ない、広範囲の既存社員を巻き込んで行なうことがポイント。

具体的には、「上司との定期的な面談」、メンターが新入社員の心理的サポートを行なう「メンター制度」、中途入社者向けの「オリエンテーション」など、中途入社者が入社後に困ること、つまずくことを先回りして解消していく取り組みが挙げられます。

社員1名の早期離職は「187.5万円/人」の損失と概算される!
社員1名が入社後3ヶ月で離職した場合の損失概算「187.5万円/人」
【内訳】
(1) 採用にかかった経費  :62.5万円
    採用単価(60万円)+人事・現場社員の人件費(2.5万円)
(2) 在籍時の費用(人件費):112.5万円
    総人件費(中途平均月収25万円×総人件費係数1.5※退職金なしで算出)
(3) 教育研修費      :12.5万円
    外注費などの直接経費(5万円)+人事・現場社員の人件費(7.5万円)
※ エン・ジャパンにて試算。
詳細はこちら「入社後活躍研究所」もご参照ください。https://corp.en-japan.com/success/16052.html
加えて、新入社員の育成に関わった社員や職場全体のモチベーション低下を招くという損失リスクもあります。連鎖的な離職につながることもあり、なお一層、オンボーディングの重要性が見て取れます。
早期離職に影響を与える「ギャップ(Gap)」、「リレーション(Relation)」、「キャパシティ(Capacity)」

早期離職には、3つの要因があります。それが、「ギャップ(Gap)」、「リレーション(Relation)」、「キャパシティ(Capacity)」。頭文字をとって「GRC」と呼んでいますが、オンボーディングを考える上で重要なものとなります。

GRC
「ギャップ(Gap)」

早期離職の要因の一つ、「ギャップ(Gap)」とは、転職者が入社前に会社に抱いていた「期待」と「現実」との乖離のことです。

たとえば、「意見が言いやすい会社」と聞いていたのに、実は上下関係が厳しく意見が言いにくい風土とのギャップや、「仕事を早く任せられる」と思っていたのに、簡単な仕事しか任せてもらえないというギャップ。その逆に難しい仕事ばかり振られ、気持ちの準備が追いつかないということもギャップにつながります。

「リレーション(Relation)」

リレーションは、ズバリ「直属の上司との関係性」です。社歴が浅いため、深い信頼関係が結べているか否かというレベルではなく、相談しやすい・話しかけやすいレベルでの関係性についてのこととなります。

中途入社者は現場に配属されると「孤独」。即戦力と思われがちで、周囲に対して「こんなこと聞いていいのか」と考えがちになります。そのため、頼れるのは直属の上司となります。その上司が忙しく、話せない場合やよそよそしい場合、孤独感はより深まります。また、適切なサポートを受けることが出来ず、成果が出せない状態になり、「自分が活躍できる場所はここじゃない。失敗した。転職しよう」と思ってしまいます。

「キャパシティ(Capacity)」

「キャパシティ(Capacity)」は 業務量の過多、もしくは過少のことを指します。仕事量がその人のキャパシティを超えて多い、もしくは少ないと離職意向に繋がってしまいます。

まだ仕事に慣れていないのに、既存の社員と同じ業務を任され、必死でこなそうとして、心身ともに疲弊してしまう。逆に気を遣って少しずつ業務を任せたことで、「単純な作業しか任されない。周りが忙しいのに、自分だけ手が空いていて気まずい」と思ってしまい、「こんなはずじゃなかった」と思わせる原因となります。

「ギャップ(Gap)」、「リレーション(Relation)」、「キャパシティ(Capacity)」へのケア例

早期離職の3つの要因に対して、どんなオンボーディングを行なえばよいのか、ケア例をご紹介します。

「ギャップ(Gap)」には、入社前(採用時)にプラス面もマイナス面も伝える!

入社前に会社に抱いていた「期待」と「現実」との乖離を生まないためには、求人情報や面接の際に、自社や仕事のプラス面だけでなく、マイナス面も正直に伝えることが有効です。

「ギャップ(Gap)」は転職者が「過度な期待や誤解」を持って入社したときに起こります。そうならないために、「企業の現実、実情が理解できる情報」提示が必要となります。面接官を担当する方、配属先の上司、人事担当者間で申し合わせをしておくことで、正しい現実を伝えられるはずです。

また、仕事内容についての「ギャップ(Gap)」は、入社初日やその後も継続的に目標設定の定期面談を設定すると良いでしょう。自分に何が期待されているのかがわからない状態ではなく、最初に簡単な作業的仕事を任されたとしても、ステップの一つだと理解してもらうなど、事前に説明が可能です。

「リレーション(Relation)」は、上司と人事の連携が鍵!

早期離職に大きく影響を与える3つの要因の中で、「リレーション(Relation)」の比重はもっとも大きく、早期離職を防ぐ鍵は「上司」と言っても過言ではありません。

毎日、5分でも10分でも、中途入社者と上司の直接話ができる時間を作り、疑問や不明点を言いやすい環境を作ってあげることが不安の解消につながっていきます。

現在、定着に悩みを抱えている企業は、よく離職者の出る上司をチェックしましょう。その際に注意したいのは、上司を外すというわけではなく、あくまでも「関係性」が問題になることです。上司のちょっとしたコミュニケーションのとり方を改善してもらうだけで、話しやすいなど、「関係性」が向上することが多々あります。

上司からすると「なぜ、この人を採用したのかわからない」といった、人事との連携に問題がある場合もあります。その結果、放置や無理な業務を任せてしまうことが起きやすいため、面接時から上司に参加してもらい、人となりの把握や「自分が採用した」という自覚を持ってもらえると、育成への責任感も芽生え、良いことばかりです。

「キャパシティ(Capacity)」は、定期的な面談で話を聞く!

業務の過多・過小は、定期的にコミュニケーションを取りながら、スキルや意向を冷静に見測って割り振ることに尽きます。

上司や人事から「仕事に慣れてきましたか?」と聞いても「はい」としか回答がない場合がありますので、「今、困っていることを教えてください」など、具体的に不満を訴えやすい聞き方をすることで、業務量に関する見解を把握することができるでしょう。

中途採用者の「オンボーディング」調査に見る有効な施策とは?

ここからは、「人事のミカタ」で実施した、「オンボーディング(定着・戦力化の取り組み)」調査の結果をご紹介します。前段の「GRC」へのケアを各社がどうしているか、また定着率が高い企業の実施している取り組みを分析しました。ぜひ参考にしてください。

【調査概要】
■調査方法:インターネットによるアンケート
■有効回答数:415社
■調査期間:2020年4月22日(水)~2020年5月26日(火)
中途採用者の「オンボーディングに力を入れている企業」41%
貴社では中途採用者の「オンボーディング(定着・戦力化のための入社後の取り組み)」に力を入れていますか?
GRC

定着・戦力化のための入社後の取り組みの実施について、「力を入れている」「どちらかと言えば力を入れている」と回答した企業は41%。

中途採用者の「定着・戦力化」に取り組む理由を教えてください。
GRC

「力を入れている」「どちらかと言えば力を入れている」と回答した企業に、定着・戦力化のための入社後の取り組みを実施する理由を聞くと、「離職率を下げたい」「採用や育成の経費を無駄にしたくない」が圧倒的に多い結果となっています。

もっとも導入率の高いオンボーディング施策は「入社1ヵ月以内の導入研修」
中途採用した社員の定着・戦力化のために、貴社で現在取り組まれていることを教えてください。
入社1ヵ月以内の導入研修
入社2ヶ月目以降の継続的な研修
ランチや飲み会などの歓迎イベント
入社者に会社オリジナルグッズを配布
メンターや相談役などの支援制度
上司と中途入社者の定期的な面談
人事と中途入社者の定期的な面談
上司など受け入れ側に対する教育
職場内コミュニケーションの活性化の推進
中途入社者を社内プロジェクトや小集団活動に参加させる
外部の離職防止サービスの導入
ハラスメントなどの相談窓口
社内の情報ポータルサイト
調査結果を分析。定着化には「人事との面談」、戦力化には「メンターなどの支援」が影響。
今回は、エン・ジャパンの『入社後活躍研究所』と、甲南大学の尾形教授との共同研究として、調査結果を分析頂きました。
分析結果①
  • 最も多く成果に影響を及ぼしたオンボーディング施策 は 「メンターや相談役などの支援制度」
  • 中途入社者の「離職率の低下」には「人事と中途入社者の定期的な面談」が影響
  • 中途入社者の「パフォーマンスの向上」には「メンターや相談役などの支援制度」が影響
定着・戦力化のための入社後の取り組みの実施について、「力を入れている」「どちらかと言えば力を入れている」と回答した企業を対象に、実施している13のオンボーディング施策を、中途採用者の離職率の低下やパフォーマンスの向上を成果変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施。
最も多く成果に影響を及ぼしたオンボーディング施策は「メンターや相談役などの支援制度」となりました。また、中途入社者の「離職率の低下」には「人事と中途入社者の定期的な面談」が影響していること、中途入社者の「パフォーマンスの向上」には「メンターや相談役などの支援制度」が影響していることがわかります。
オンボーディング施策 影響を及ぼす成果変数
人事と中途入社者の定期的な面談(β=.246) ★中途入社者の離職率の低下
メンターや相談役などの支援制度(β=.211) ★中途入社者のパフォーマンスの向上
メンターや相談役などの支援制度(β=.216)
上司など受け入れ側に対する教育(β=.172)
中途採用活動へのアピール
人事と中途入社者の定期的な面談(β=.232)
メンターや相談役などの支援制度(β=.205)
オンボーディングの課題の明確化
上司など受け入れ側に対する教育(β=.219)
メンターや相談役などの支援制度(β=.180)
中途採用者の所属部門の業績向上
メンターや相談役などの支援制度(β=.245)
上司と中途入社者の定期的な面談(β=.165)
入社1ヶ月以内の導入研修(β=-.165)
中途入社者の配属された職場のコミュニケーションの活性化
順位 オンボーディング施策 頻出
回数
1 メンターや相談役などの支援制度 5
2 上司など受け入れ側に対する教育 2
3 人事と中途入社者の定期的な面談 2
4 上司と中途入社者の定期的な面談 1
マイナスの影響 入社1ヶ月以内の導入研修 1
一方、「入社1ヶ月以内の導入研修」が、中途入社者の配属された職場のコミュニケーションの活性化にマイナスの影響があるという結果も。導入研修と配属後の乖離、現実とのギャップによってコミュニケーションを阻害している可能性があります。研修内容を見直してみましょう。
有効な5つのオンボーディング施策
次いで、定着・戦力化のための入社後の取り組みの実施について、「力を入れていない」企業も含めて、取り組みと実際の定着率やパフォーマンス発揮度との相関を分析しています。
分析結果②
  • 中途入社者の定着率には「人事」+「職場のコミュニケーション」が影響。
  • 中途入社者のパフォーマンスには「上司」+ 「職場のコミュニケーション」が影響。
オンボーディング施策 成果変数
職場内コミュニケーションの活性化の推進(β=.160)
人事と中途入社者の定期的な面談(β=.118)
中途入社者の定着率
職場内コミュニケーションの活性化の推進(β=.203)
上司と中途入社者の定期的な面談(β=.157)
中途入社者のパフォーマンス
中途入社者の定着率には「人事との定期的な面談」と、「職場内コミュニケーションの活性化の推進」が影響。中途入社者のパフォーマンス発揮度には「上司と中途入社者の定期的な面談」と、同じく「職場内コミュニケーションの活性化の推進」が影響していることがわかりました。前述の「GRC」に関するケア例の有効性を裏付ける結果となっています。
分析結果③
  • 中途入社者の定着率とパフォーマンスの良さは企業規模とは関係ない
企業
規模
企業数 平均値 標準
偏差
中途入社者定着率 1~
99名
221 2.95 1.098
100~
999名
162 3.08 0.946
1000
名以上
33 2.79 1.053
中途入社者パフォーマンス 1~
99名
221 3.07 0.769
100~
999名
162 3.16 0.649
1000
名以上
33 3.15 0.619
また、中途入社者の定着率・パフォーマンスの発揮度と、企業規模の相関を確認しましたが、企業規模が大きかろうと小さかろうと相関はないことがわかりました。
分析結果④
  • オンボーディング施策を実施するならば、どの成果変数にも影響を及ぼさなかった要因を削除した5つの施策
オンボーディング施策 考慮点
1. メンターや相談役などの支援制度 誰をメンターや相談役にするか。
2. 上司と中途入社者の定期的な面談 面談内容のデザイン(人事面談との役割分担)。
3. 人事と中途入社者の定期的な面談 面談内容のデザイン(上司面談との役割分担)。
4. 上司など受け入れ側に対する教育 どのような教育をするか。その内容が重要。 同時に指導することが可能。
5.職場内コミュニケーションの活性化の推進 どのようにコミュニケーションを活性化させるか。場の設定など。
最後に、オンボーディング施策として有効な5つをご紹介します。
  • 1メンターや相談役などの支援制度
  • 2上司と中途入社者の定期的な面談
  • 3人事と中途入社者の定期的な面談
  • 4上司など受け入れ側に対する教育
  • 5職場内コミュニケーションの活性化の推進
まだ実施していないものがあれば、ぜひ考慮点を参考に実施を検討してください。
まとめ

コロナ禍において、厳選採用などを実施する際、入社者に活躍・定着してもらえるかは企業の浮沈に大きく関わります。離職の予兆を素早く察知して、適切なケアにつなぐためにも、ぜひ自社に最適なオンボーディングを実施してください。今回の特集が、中途入社者の受け入れ、早期戦力化への参考になれば幸いです。

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【参照】なぜ人は辞めるのか?退職を科学する 入社後活躍研究所
https://corp.en-japan.com/success/16052.html
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