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高年齢者の労災防止、カスハラ対策、労基法改正…、中小企業はどう備える?

人事が知るべき法改正 [2026年・2027年]

公開日 2025/11/19
更新日 2025/11/19
要約すると
  • ミドル・シニアの雇用企業は注目!高年齢労働者の労災防止措置、在職老齢年金の見直し
  • 子ども・子育て支援金の徴収開始、障がい者の法定雇用率、カスハラ対策の義務化
  • 2027年は、労働基準法が40年に一度の大改正!他、社保適用の対象拡大
監修者
「人事のミカタ」編集長/第二種衛生管理者/認定心理士
手塚伸弥
2001年から人材系企業にて求人広告・採用広報ツールなどのコピーライター、クリエイティブディレクターを経て、2014年エン入社。以後、編集長として採用・人事労務・雇用関連の調査や情報発信を行なう。
はじめに

いよいよ2025年も終盤。2026年の足音が聞こえてくる時期になりました。中小企業の人事担当者にとっては、来年以降の法改正情報などを収集し、対応を検討するタイミングかもしれません。

法改正への対応には、就業規則の変更や従業員への説明会開催など、準備に多くの時間を要するものが少なくありません。そこで今回は、多忙な人事担当者が今のうちから備えておくべき「2026年・2027年の法改正」に焦点を当て、各改正のポイントと企業に求められる対応をご紹介します。計画的な準備を進めるための一助として、ぜひ本記事をご活用ください。

[2026年4月施行] 高年齢労働者の労災防止措置が努力義務に【労働安全衛生法】

人生100年時代。65歳までの雇用義務化なども伴い、ミドル・シニアの労働者が増加しています。伴って、高年齢労働者の労災による死傷者数(休業4日以上)は、全体の約3割にも及びます。

この状況を受け、2026年4月1日より、60歳以上の労働者に対する労働災害防止措置が事業者の「努力義務」として課されることになりました。企業は、高年齢労働者が安全に働き続けられる環境を整備する必要があります。

企業に求められる取組

厚生労働省が策定した「エイジフレンドリーガイドライン」では、事業場の実情に応じて実施可能なものに取り組むことが求められています。以下に主な取り組み例をご紹介します。

1 安全衛生管理体制の確立等
  • ●経営トップ自らが安全衛生方針を表明し、担当する組織や担当者を指定
  • ●高年齢労働者の身体機能の低下等による労働災害についてリスクアセスメントを実施
2 職場環境の改善
  • ●照度の確保、段差の解消、補助機器の導入等、身体機能の低下を補う設備・装置の導入
  • ●勤務形態等の工夫、ゆとりのある作業スピード等、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理
3 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
  • ●健康診断や体力チェックにより、事業者、高年齢労働者双方が当該高年齢労働者の健康や体力の状況を客観的に把握
4 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
  • ●健康診断や体力チェックにより把握した個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の点で適合する業務をマッチング
  • ●集団及び個々の高年齢労働者を対象に身体機能の維持向上に取り組む
5 安全衛生教育
  • ●十分な時間をかけ、写真や図、映像等、文字以外の情報を活用した教育を実施
  • ●再雇用や再就職等で経験のない業種や業務に従事する場合には、特に丁寧な教育訓練
[2026年4月施行] 在職老齢年金の見直し【年金制度改正法】

現行の在職老齢年金制度では、65歳以上の労働者の老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が一定の基準額(2025年度は50万円)を超えると、超えた額の半分が年金支給額から減額されます。

2026年4月に施行される改正では、この支給停止の基準額が月額62万円に引き上げられることとなりました。これにより年金の減額対象となる高齢就労者の大幅な減少が見込まれています。この改正によって、働きながら年金を受給する人のいわゆる「働き損」が軽減され、就労意欲のさらなる向上が期待されます。厚生労働省の試算によると、約20万人が新たに年金の全額受給対象となる見通しです。

【例】賃金月45万円、厚生年金の受給額が月10万円の場合
企業への影響と対応策

在職老齢年金の減額基準が引き上げられることで、意欲と能力のある高齢従業員が、年金の減額を気にすることなく働きやすくなります。これは、企業にとって貴重な人材の確保や、円滑な技能継承、深刻化する人手不足への対策といった面で大きなメリットとなる可能性があります。

一方で、制度変更を機に従業員の年金制度への関心が高まることも予想されます。企業の人事担当者としては、改正内容について正確に理解し、対象となる従業員からの問い合わせに答えられるよう準備しておくとともに、必要に応じて社内説明会や個別相談の機会を設けるなどの情報提供を行なうことが望ましいでしょう。

[2026年4月施行] 子ども・子育て支援金の徴収開始【子ども・子育て支援法】

政府は、異次元の少子化対策の財源を確保するため、2023年12月に「こども未来戦略」を策定。その柱の一つとして、社会全体で子育て世帯を支える「子ども・子育て支援金制度」が創設され、2026年4月から運用が開始されます。これに伴い、2026年4月分の保険料(原則として5月納付分)から、支援金の徴収が始まります。

企業への影響と対応策
  • 給与計算への反映
    支援金は、公的医療保険(健康保険など)の保険料に上乗せする形で徴収され、事業主と労働者で折半負担となります。そのため、給与計算システムの改修や設定変更が必要になるでしょう。
  • 従業員への周知
    従業員にとっては新たな負担が発生するため、丁寧な説明が不可欠です。制度の趣旨や徴収開始時期、給与からの控除額の目安について、社内通知や説明会等で事前に周知しましょう。
  • 給与明細への表示
    こども家庭庁は、法令上の義務ではないとしつつも、制度の趣旨を理解してもらうため、給与明細に支援金額を内訳として示すことに協力を求めています。システム改修が可能であれば、従業員の理解促進のために内訳表示を検討することが望ましいでしょう。
[2026年7月施行] 障がい者法定雇用率が2.7%に引き上げ【障害者雇用促進法】
2024年4月 2026年7月~
民間企業の法定雇用率 2.5% 2.7%
対象事業主の範囲 40.0人以上 37.5人以上

障がいのある方の雇用機会をさらに促進するため、民間企業に義務付けられている障がい者の法定雇用率は、段階的に引き上げられています。2026年7月1日からは、現行の2.5%から2.7%に引き上げられ、これに伴い雇用義務の対象となる事業主の範囲も拡大します。

企業への影響と対応策

まずは自社の常時雇用する労働者数を確認し、新たに義務の対象となるか(従業員37.5人以上)を把握する必要があります。新たに対象となる場合は、ハローワークへの届出や、障がい者雇用の計画策定が急務となります。

既に義務の対象となっている企業は、2.7%の雇用率を達成するための具体的なアクションが求められます。採用ターゲットの見直し、ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの連携強化、受け入れ部署における業務の切り出しや職場環境の整備など、計画的な採用活動と受け入れ体制の構築を進めましょう。

[2026年内施行予定] カスタマーハラスメント対策が義務化へ【労働施策総合推進法等】

顧客等からの著しい迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」から従業員を守るため、事業者に防止措置を講じることが義務化されます。改正法は2025年6月に公布されており、遅くとも2026年末頃までに施行される予定です。

企業への影響と対応策

企業には、パワーハラスメント防止措置と同様に、以下の措置を講じることが求められる見込みです。

  • 事業主の方針の明確化と周知・啓発
  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 被害を受けた労働者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応など)
  • その他、原因究明や再発防止策など
[2027年以降] 40年に一度の大改正となる【労働基準法】

厚生労働省の有識者研究会において、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的な見直しに関する議論が進められており、2026年の通常国会に改正法案が提出され、早ければ2027年4月からの施行が見込まれています。現時点で議論されている主な改正項目は以下の通りです。

No 改正項目 主な内容 対象企業
1 連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止) 現行の労基法では法定休日として、1週間のうち少なくとも1日の休日を付与することが義務付けられています。ただし、業務の都合により困難と判断した場合には、「4週間を通じて4日の休日を付与」すれば、週休1日制の適用を受けない特例が認められています。

この4週4休の特例は、理論上では長期の連続勤務が可能になってしまう点が問題視されており、特例を2週2日の変形週休制に見直し、連続14日以上の勤務は禁止されることになります。
4週4日の法定休日を採用している企業
2 法定休日の明確な特定義務 現行の労基法では原則として週1日以上の休日が義務化されてはいるものの、どの曜日を法定休日に特定しなければいけないという義務はありません。

法定休日とそれ以外では、割増賃金の割増率が違うため、割増賃金の支払いに関して企業側と労働者側とでトラブルが生じる可能性があることから、法定休日の事前の特定を義務化することになります。
法定休日を明確にしていない企業
3 勤務間インターバル制度の義務化 勤務間インターバル制度は労働者が適切な生活時間や睡眠時間を確保することを目的に、2019年4月に「努力義務」として導入されました。

しかしながら導入企業の割合が低く、義務化が検討されています。インターバル時間は11時間となりそうです。
勤務間インターバル制度を導入していない企業
4 有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化 現在、年次有給休暇取得時の賃金の算定方式は、①平均賃金方式、②通常賃金方式、③標準報酬日額方式の3種類があり、企業はいずれかを選び、就業規則に定めることが義務付けられています。

改正後は原則として「通常賃金方式」を採用しなければならなくなります。
有給休暇の取得時の賃金を通常賃金形式にしていない企業
5 つながらない権利に関するガイドラインの策定 「つながらない権利」とは、労働時間外に会社からの業務上のメールや電話への応答を拒否できる権利を指します。

「勤務時間外にどのような連絡までが許容でき、どのようなものを拒否できるかといった社内ルールを労使で検討していくことが必要」として、ガイドラインの策定が提言されました。
全企業
6 副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し 副業・兼業者の割増賃金の算定において、本業先と副業・兼業先の労働時間通算ルールを適用しない方向で検討されています。ただし健康管理のため労働時間の通算管理は必要です。 全企業
7 法定労働時間週44時間の特例措置の廃止 一定の要件を満たす事業場では、法定労働時間週44時間の特例が認められていましたが、この特例措置が廃止されます。 週44時間の特例措置の対象となっている企業
[2027年10月施行] パート・アルバイトの社会保険適用がさらに拡大【年金制度改正法】

短時間労働者に対するセーフティネットを拡充するため、厚生年金保険・健康保険の適用対象がさらに拡大されます。2024年10月に「従業員数51人以上」の企業まで拡大されましたが、2027年10月からは「従業員数36人以上」の企業が対象となります。(※従業員数は、現在の厚生年金保険の被保険者数でカウントします)

企業への影響と対応策

企業規模要件は今後も段階的に撤廃される予定であり、すべての中小企業にとって他人事ではありません。まずは自社が新たに対象となるかを確認し、該当する場合は、加入対象となる従業員の把握、社会保険料の会社負担額の試算、従業員への説明といった準備を計画的に進める必要があります。

特に、扶養の範囲内で働くことを希望している従業員にとっては、働き方に大きく影響します。今後の働き方について一人ひとりと丁寧にコミュニケーションをとり、意向を確認することが、トラブル防止と人材の定着において非常に重要です。

さいごに

2026年・2027年の法改正情報はいかがでしたでしょうか。いずれの改正も、企業の労務管理やコストに影響を与える重要なものばかりです。施行が先の話だと捉えず、今のうちから情報収集と準備を進めることが、スムーズな対応の鍵となります。ぜひ本記事をご参考ください。

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