中途採用ノウハウ、ユーザー調査、法改正情報が満載!
いよいよ2025年も終盤。2026年の足音が聞こえてくる時期になりました。中小企業の人事担当者にとっては、来年以降の法改正情報などを収集し、対応を検討するタイミングかもしれません。
法改正への対応には、就業規則の変更や従業員への説明会開催など、準備に多くの時間を要するものが少なくありません。そこで今回は、多忙な人事担当者が今のうちから備えておくべき「2026年・2027年の法改正」に焦点を当て、各改正のポイントと企業に求められる対応をご紹介します。計画的な準備を進めるための一助として、ぜひ本記事をご活用ください。
人生100年時代。65歳までの雇用義務化なども伴い、ミドル・シニアの労働者が増加しています。伴って、高年齢労働者の労災による死傷者数(休業4日以上)は、全体の約3割にも及びます。
この状況を受け、2026年4月1日より、60歳以上の労働者に対する労働災害防止措置が事業者の「努力義務」として課されることになりました。企業は、高年齢労働者が安全に働き続けられる環境を整備する必要があります。
厚生労働省が策定した「エイジフレンドリーガイドライン」では、事業場の実情に応じて実施可能なものに取り組むことが求められています。以下に主な取り組み例をご紹介します。
| 1 | 安全衛生管理体制の確立等 |
|
|---|---|---|
| 2 | 職場環境の改善 |
|
| 3 | 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握 |
|
| 4 | 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応 |
|
| 5 | 安全衛生教育 |
|
現行の在職老齢年金制度では、65歳以上の労働者の老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が一定の基準額(2025年度は50万円)を超えると、超えた額の半分が年金支給額から減額されます。
2026年4月に施行される改正では、この支給停止の基準額が月額62万円に引き上げられることとなりました。これにより年金の減額対象となる高齢就労者の大幅な減少が見込まれています。この改正によって、働きながら年金を受給する人のいわゆる「働き損」が軽減され、就労意欲のさらなる向上が期待されます。厚生労働省の試算によると、約20万人が新たに年金の全額受給対象となる見通しです。
在職老齢年金の減額基準が引き上げられることで、意欲と能力のある高齢従業員が、年金の減額を気にすることなく働きやすくなります。これは、企業にとって貴重な人材の確保や、円滑な技能継承、深刻化する人手不足への対策といった面で大きなメリットとなる可能性があります。
一方で、制度変更を機に従業員の年金制度への関心が高まることも予想されます。企業の人事担当者としては、改正内容について正確に理解し、対象となる従業員からの問い合わせに答えられるよう準備しておくとともに、必要に応じて社内説明会や個別相談の機会を設けるなどの情報提供を行なうことが望ましいでしょう。
政府は、異次元の少子化対策の財源を確保するため、2023年12月に「こども未来戦略」を策定。その柱の一つとして、社会全体で子育て世帯を支える「子ども・子育て支援金制度」が創設され、2026年4月から運用が開始されます。これに伴い、2026年4月分の保険料(原則として5月納付分)から、支援金の徴収が始まります。
| 2024年4月 | 2026年7月~ | |
|---|---|---|
| 民間企業の法定雇用率 | 2.5% | 2.7% |
| 対象事業主の範囲 | 40.0人以上 | 37.5人以上 |
障がいのある方の雇用機会をさらに促進するため、民間企業に義務付けられている障がい者の法定雇用率は、段階的に引き上げられています。2026年7月1日からは、現行の2.5%から2.7%に引き上げられ、これに伴い雇用義務の対象となる事業主の範囲も拡大します。
まずは自社の常時雇用する労働者数を確認し、新たに義務の対象となるか(従業員37.5人以上)を把握する必要があります。新たに対象となる場合は、ハローワークへの届出や、障がい者雇用の計画策定が急務となります。
既に義務の対象となっている企業は、2.7%の雇用率を達成するための具体的なアクションが求められます。採用ターゲットの見直し、ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの連携強化、受け入れ部署における業務の切り出しや職場環境の整備など、計画的な採用活動と受け入れ体制の構築を進めましょう。
顧客等からの著しい迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」から従業員を守るため、事業者に防止措置を講じることが義務化されます。改正法は2025年6月に公布されており、遅くとも2026年末頃までに施行される予定です。
企業には、パワーハラスメント防止措置と同様に、以下の措置を講じることが求められる見込みです。
厚生労働省の有識者研究会において、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本的な見直しに関する議論が進められており、2026年の通常国会に改正法案が提出され、早ければ2027年4月からの施行が見込まれています。現時点で議論されている主な改正項目は以下の通りです。
| No | 改正項目 | 主な内容 | 対象企業 |
|---|---|---|---|
| 1 | 連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止) |
現行の労基法では法定休日として、1週間のうち少なくとも1日の休日を付与することが義務付けられています。ただし、業務の都合により困難と判断した場合には、「4週間を通じて4日の休日を付与」すれば、週休1日制の適用を受けない特例が認められています。 この4週4休の特例は、理論上では長期の連続勤務が可能になってしまう点が問題視されており、特例を2週2日の変形週休制に見直し、連続14日以上の勤務は禁止されることになります。 |
4週4日の法定休日を採用している企業 |
| 2 | 法定休日の明確な特定義務 |
現行の労基法では原則として週1日以上の休日が義務化されてはいるものの、どの曜日を法定休日に特定しなければいけないという義務はありません。 法定休日とそれ以外では、割増賃金の割増率が違うため、割増賃金の支払いに関して企業側と労働者側とでトラブルが生じる可能性があることから、法定休日の事前の特定を義務化することになります。 |
法定休日を明確にしていない企業 |
| 3 | 勤務間インターバル制度の義務化 |
勤務間インターバル制度は労働者が適切な生活時間や睡眠時間を確保することを目的に、2019年4月に「努力義務」として導入されました。 しかしながら導入企業の割合が低く、義務化が検討されています。インターバル時間は11時間となりそうです。 |
勤務間インターバル制度を導入していない企業 |
| 4 | 有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化 |
現在、年次有給休暇取得時の賃金の算定方式は、①平均賃金方式、②通常賃金方式、③標準報酬日額方式の3種類があり、企業はいずれかを選び、就業規則に定めることが義務付けられています。 改正後は原則として「通常賃金方式」を採用しなければならなくなります。 |
有給休暇の取得時の賃金を通常賃金形式にしていない企業 |
| 5 | つながらない権利に関するガイドラインの策定 |
「つながらない権利」とは、労働時間外に会社からの業務上のメールや電話への応答を拒否できる権利を指します。 「勤務時間外にどのような連絡までが許容でき、どのようなものを拒否できるかといった社内ルールを労使で検討していくことが必要」として、ガイドラインの策定が提言されました。 |
全企業 |
| 6 | 副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し | 副業・兼業者の割増賃金の算定において、本業先と副業・兼業先の労働時間通算ルールを適用しない方向で検討されています。ただし健康管理のため労働時間の通算管理は必要です。 | 全企業 |
| 7 | 法定労働時間週44時間の特例措置の廃止 | 一定の要件を満たす事業場では、法定労働時間週44時間の特例が認められていましたが、この特例措置が廃止されます。 | 週44時間の特例措置の対象となっている企業 |
短時間労働者に対するセーフティネットを拡充するため、厚生年金保険・健康保険の適用対象がさらに拡大されます。2024年10月に「従業員数51人以上」の企業まで拡大されましたが、2027年10月からは「従業員数36人以上」の企業が対象となります。(※従業員数は、現在の厚生年金保険の被保険者数でカウントします)
企業規模要件は今後も段階的に撤廃される予定であり、すべての中小企業にとって他人事ではありません。まずは自社が新たに対象となるかを確認し、該当する場合は、加入対象となる従業員の把握、社会保険料の会社負担額の試算、従業員への説明といった準備を計画的に進める必要があります。
特に、扶養の範囲内で働くことを希望している従業員にとっては、働き方に大きく影響します。今後の働き方について一人ひとりと丁寧にコミュニケーションをとり、意向を確認することが、トラブル防止と人材の定着において非常に重要です。
2026年・2027年の法改正情報はいかがでしたでしょうか。いずれの改正も、企業の労務管理やコストに影響を与える重要なものばかりです。施行が先の話だと捉えず、今のうちから情報収集と準備を進めることが、スムーズな対応の鍵となります。ぜひ本記事をご参考ください。