- 2022年4月・10月に施行!「改正育児・介護休業法」5つの変更ポイントを解説
- 社労士が回答!「中小企業が、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するにはどうすべき?」
- 中小企業を悩ませる「育休代替要員の確保」には、育休復帰支援プランの策定がオススメです。
4年前の同調査と比較すると男女ともに取得率は上昇し、まさに隔世の感。そして、その変化をさらに後押しするように2022年4月から「改正育児・介護休業法」が施行されました。
本改正によって、育休取得の意向確認や周知などを、「すべての企業で実施することが義務化」されることになりました。とはいえ「具体的には何をしたらいい?」という中小企業は多いはずです。そこで今回は、「人事が知るべき法改正『育児・介護休業法』」と題し、具体的な対応などについての情報をお届けします。ぜひ、参考にしてください。
※参考「育児休業(改正育児・介護休業法)について」アンケート
https://partners.en-japan.com/enquetereport/172
男女とも仕事と育児を両立できるように、産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化などが改正されました。まずは、変更のポイントを確認していきましょう。
企業規模などに関わらず、全ての企業において「育児休業を取得しやすい雇用環境整備」が必須になります。
育児休業を取得しやすい雇用環境とは、以下4つの中からいずれかの措置を講じなければなりません。複数の措置を講じることが望ましいとされています。
- 1育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
- 2育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
- 3自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
- 4自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休精度と育児休業取得促進に関する方針の周知
また、妊娠・出産する社員本人、または配偶者の申し出をした社員に対して、育児休業制度等などの事項を個別に周知し、休業取得の意向を確認する対応が企業側で必須になります。
個別に周知する事項は以下の4点です。
- 1育児休業・産後パパ育休に関する制度
- 2育児休業・産後パパ育休の申し出先
- 3育児休業給付に関すること
- 4労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
周知・意向確認の方法は「面接(オンライン面接も可能)」、「書面交付」となっています。また、社員からの希望があれば「FAX」、「電子メール」での周知・意向確認も可能になります。
有期雇用労働者の「育児・介護休業」取得要件の緩和
有期雇用労働者の「育児・介護休業」取得要件が緩和されます。以前まで2つあった取得要件のうち「雇用された期間が1年以上」が撤廃され、「1歳6か月までの間に雇用契約が満了することが明らかでない」場合のみとなりました。
※労使協定の締結により「雇用された期間が1年未満の労働者」を除外することも可能
※育児休業給付についても同様に緩和。
① 育児休業の申出があった時点で労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。
② 事業主が「更新しない」旨の明示をしていない場合については、原則として、「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されません。
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設・育児休業の分割取得
2022年10月1日から適用される「産後パパ育休」は、育休とは別に取得可能です。子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能で、原則休業の2週間前までの申請で取得できるようになります。また、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能となります。
産後パパ育休も育児休業給付(出生時育児休業給付金)の対象です。休業中に就業日がある場合は、就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下である場合に、給付の対象となります。
従業員数1,000名超の企業は、育児休業等の取得状況を「年1回公表」することが義務付けられるようになります。
- 1公表すべき内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。
※取得率の算定期間は、公表を行う日の属する事業年度(会計年度)の直前の事業年度 - 2公表する場所は、自社HP等のほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」も推奨されています。
- 3公表に当たっては、育休取得率等と合わせて以下も明示してください
・当該割合の算定期間である公表前事業年度の期間
・(育児休業等の取得割合)又は(育児休業等と育児目的休暇の取得割合)いずれの方法により算出したものか - 4労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
また、事業年度をまたがって育児休業を取得した場合は、育児休業を開始した日を含む事業年度での取得としてカウント。また、分割して複数の事業年度において育児休業等を取得した場合は、最初の育児休業等の取得のみが計算の対象になります。ご注意ください。
「育児休業を取得しやすい雇用環境を整備しろと言われても、具体的に何をすれば…」という中小企業の声が多く聞こえてきています。4つの措置に関して、社労士が回答します。ぜひ参考にしてください。
従業員の人数が多ければ社外の研修機関を活用するのもいいですが、少人数の中小企業では厚生労働省の「企業向け研修用資料」を利用して社内研修をするとよいでしょう。職場等で育児休業取得を含めた、育児との係わりを促進するための動画資料とパワーポイントの資料を以下からご活用ください。
厚生労働省イクメンプロジェクト 職場内研修用資料
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/training/
相談窓口は、形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることが重要です。加えて、労働者に対する窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておきましょう。
法律のみならず社内の制度を熟知し、個別周知と意向確認を含めた取得に向けての社内手続きがスムーズに行える体制が望ましく、担当者を社内に置くことが望ましいと言えるでしょう。
もし事例になる対象社員がいない場合は、その他の措置(研修の実施、相談窓口の設置、方針の周知)を進めていただくことになります。
また事例になる社員がいる場合は、取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供していきます。この際、提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供することにより、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮することが必要です。
「制度と育休取得促進に関する方針の周知」は、育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することを意味します。今回の改正では4月1日施行の部分と10月1日施行の部分に分かれますので、このタイミングで周知されるのが効果的と言えます。
事業所内やイントラネットへ掲示が難しいようであれば、その他の措置(研修の実施、相談窓口の設置、自社の育休取得の事例提供)を進めていただくことになります。
ただでさえ人手不足の中小企業において、社員の育休取得や、育休取得者の代替要員の確保は大問題になりがちです。そこでオススメしたいのが、厚生労働省が推奨する「育休復帰支援プラン」の策定です。
従業員の「育休復帰支援プラン」の作成をした上で、育児休業取得者の代替要員を確保し、育児休業取得者を原職等に復帰させた中小企業には、「対象労働者1人あたり47.5万円~」の支給が発生するため、負担が楽になるはずです。ぜひ活用をご検討ください。
さらに、厚生労働省では、「中小企業のための育児・介護支援プラン導入支援事業」を行っています。育休復帰支援プランをスムーズに導入するために専門の育児プランナーによる無料支援も受けられます。
プランを策定・実施することで、社員は安心して育休を取得し復職でき、他方、制度利用者の所属する職場では、快く休業に送り出すことができるようになります。また、プランを実行し、職場のマネジメントが改善されることは、職場全体の業務の効率化に繋がる可能性があります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000067027.html
厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/000756789.pdf
厚生労働省「中小企業のための育児・介護支援プラン導入支援事業」
https://ikuji-kaigo.com/
「育児・介護休業法」の改正によって、今年度から男性社員の育休取得も増えていくことが想定されます。育休社員への対応が不慣れな中小企業においては、早々に準備をしていくことが重要です。本特集を参考にして頂ければ幸いです。また、本テーマに関しては、今後も情報を更新していきますので、ぜひご参考ください。
「育休を取ることで、みんなに迷惑がかかるぞ。」
こんな上司の発言は、もちろんNGとなります。特に男性育休は、中小企業においては前例がない場合が多いですが、「育休取得を控えさせるような発言」はいけません。育児休業の申出が円滑に行われるよう働きかけましょう。