- 景況感はイマイチでも、採用は過熱状態!選考辞退を防ぐことが採用成功のための第一歩。
- 求職者の2人に1人は「辞退経験あり」。その内6割が、辞退社数は「2社以上」と回答。
- 選考辞退が起きやすいタイミングは「面接前の辞退」。エピソードもご紹介。
厚生労働省が発表した2022年8月の有効求人倍率は、前月から0.03ポイントアップし「1.29倍」。2022年では最高値を記録しました。
新規求人数を産業別に見ると、前年同月の2021年8月と比較して、「宿泊業・飲食サービス業」51.1%増、「生活関連サービス業・娯楽業」28.9%増、「卸売業・小売業」18.7%増、「製造業」17.0%増と大きく求人数が回復。景況感は鈍くても、採用市場は過熱している状態です。
そんな状況の今、求人を出す企業側では「応募者の選考辞退」が多発しています。採用選考における辞退は、企業側にとってかけた時間や労力を消しかねない問題です。そこで、求職者が選考辞退をする心理や対策について、はじめて人事担当者になった方にもわかるよう解説します。
■調査方法:インターネットによるアンケート
■調査期間:2022年7月27日~8月28日
■有効回答数:9,350名
まず、求職中の約9,000名に、「転職活動において選考辞退をしたことはありますか?」と伺うと、「ある」と回答したのは55%でした。つまり、2人に1人は選考辞退の経験があり、求職者にとって選考辞退は特別な行為ではないことがわかります。
また、年代別で見ると、20代は「辞退経験あり」46%、「辞退経験なし」54%。30代は「辞退経験あり」55%、「辞退経験なし」45%となり、年齢が上がるにつれ「辞退経験あり」が増えていることが見て取れます。これはあまり不思議なことではなく、年齢が上がり長く働くことで、転職の機会が増え、選考辞退の経験者が増えたとみて良いでしょう。
続いて、選考辞退の経験者に「辞退した社数」を聞いてみました。すると、辞退社数が「1社」と回答した人は全体の39%となりました。そして「2社以上」と回答した人を合計すると61%。20代の若手であっても傾向は同じで、「1社」43%、「2社以上」合計57%となっています。
辞退数が多いということは、それだけ複数の会社の求人に応募しているということです。企業の人事・採用担当者としては、良い人ほど他社に採用されてしまう(自社は辞退されてしまう)リスクを把握して、採用選考をスピーディーに進めたいところです。
選考辞退が発生するのは、選考過程の3つのタイミングです。
①書類選考~面接日当日までの期間に発生する面接前の辞退
②面接を実施した後の辞退
③採用が決まって、内定を出した後の辞退
では、どのタイミングで辞退が発生しやすいのか、求職者に聞いた結果を確認していきます。
求職者に、選考辞退をしたタイミングを聞くと、「面接前」が45%と最多となりました。次いで、「面接後」の辞退が43%、「内定取得後」の辞退が39%、また「面接前日・当日」の辞退は6%となっています。
企業の人事・採用担当者にとって難しいのは、「辞退の理由」を直接聞くことがほぼできず、対策が打ちづらいという点です。そこで、以下からはアンケートによってわかったホンネの辞退理由を、発生タイミングごとに紹介していきます。
面接前に選考を辞退した人に辞退理由を伺うと、1位は「他社の選考が通過したため」31%、2位は「ネットで良くない口コミを見たため」22%、3位は「企業の応対が悪かったため」21%となりました。
「応募者に対して、書類選考の通過や面接の案内を送り、日程調整している最中だったのに…」という採用担当者の悲しい声が聞かれる面接前の選考辞退。その中で、もっとも確率が高いと思われる辞退理由こそ、1位の「他社の選考が通過した」でしょう。
そのため、面接前の辞退対策として何より大事なのが、選考のスピードアップです。良い人材ほど他社の選考を通過してしまうと考え、一日でも早い書類選考や面接調整連絡ができる体制や仕組みが必要です。
面接後に選考を辞退した理由では、「求人情報と話が違ったため」が42%と1位になりました。2位は「他社の選考が通過したため」が28%。3位は同着で「雰囲気が悪かったため」と「面接官の態度が悪かったため」が並びます。
面接後の辞退は、面接の内容が大きく起因してきます。1位の「求人情報と話が違ったため」は、特に応募者から聞かれがちな不満点。求人情報に書いてあった給与や勤務地、待遇の違い、仕事内容の相違など、面接官が求人情報と違う説明したことから起きる辞退がもっとも多くなっています。面接を担当する人物が人事以外であれば求人情報の共有や、説明に相違が起きないよう、必ずチェックするようにしましょう。
また、求職者から寄せられた辞退のエピソードで多いのが、「面接官の態度が悪かった」です。「面接官から説教された」「自分の話にあまり興味がなさそうだった」「身なりが不潔だった」など、会社の顔でもある面接官の言動などによって、辞退を決める求職者はとても多い状況です。
近年はネットなどに面接官へのクレームの書き込みも増え、炎上する事態も散見されます。面接官を担当する方は、事前に面接で言ってはいけないことや、聞いてはいけないことを確認しておきましょう。
企業から内定を取得した後に選考辞退した理由の1位は「他社の選考が通過したため」37%となりました。面接前、面接後、内定後、全てのタイミングにおいて上位になった「他社の選考通過」。求職者の売り手市場が加速している証と言ってよい状況です。
また同率1位の「提示された条件がイマイチだったため」もよく聞く辞退理由です。どんなに面接で意気投合していたとしても、内定と同時に提示された条件が悪かったことで、一気に気持ちが冷めたという声も。
本当に採用したいと考える人材に対しては、早い選考タイミングでの条件提示や、求職者の希望より条件が低いと感じられた場合は代替の条件を追加して提示することも検討しましょう。
内定まで出して辞退されることは、応募者にとっても、企業側にとっても採用選考にかけた時間が消えるということです。また、それまでの選考で、内定者以外を落としてしまった場合、再度募集をし直すという事態になり、さらに予算がかかる事態に陥る可能性もあります。
最後に、面接前日・当日の辞退の理由についても確認しましょう。こちらも「他社の選考が通過したため」がTOPですが、2位には「体調不良になったため」がランクイン。面接に万全の体調で臨めず、早々の回復も難しいため辞退したという声が多々ありました。
一方、「面倒になったため」「気が変わったため」という理由もそれぞれ10%程度ありました。そもそも志望動機が低い応募者だったため、面接の時間が取られずに良かったとも言えますが、前日連絡やリマインド送信によって、辞退の意向が早めにわかる場合がありますので、対応をご検討ください。
ちなみに、面接前日・当日の辞退の際に、「企業に連絡をしたか」聞いたところ、約9割の人が「連絡した」と回答しました。人事が困る連絡ナシのドタキャンは、数年前と比較して改善されてきているようです。
選考辞退は、タイミングごとに様々な理由があることがおわかりいただけたかと思います。
しかし多くの場合、企業側で選考におけるプロセスや言動等の改善をすることで、好転する可能性を秘めています。
最後に、求職者の「辞退を決めたエピソード」と、「入社を決めたエピソード」をご紹介します。
どんなことが起きると嫌がられ、逆にどんなことをすることで「この会社に入社したい」と思うのかを確認し、ぜひ自社の選考の振り返りや改善にお役立てください。
- ●他社面接で当日に採用が確定した。そのスピード感。(28歳男性)
- ●今すぐに他社を辞退しないと内定を出さないと言う言葉で、辞退を決めました。(28歳女性)
- ●内定を頂いた他社の業務内容に魅力があったため。(26歳女性)
- ●ネットで企業名を検索したところ、評価や口コミが悪く、自分が想像していた仕事内容と違かった為辞退しました。(28歳女性)
- ●ネットの口コミに疑念を抱き、質問を採用担当へした際の回答がイマイチだった。求人に記載されている内容と実際の残業時間が異なっていることなど、不信感がでてしまった。(25歳女性)
- ●ネットでの企業の方からのクチコミというより、お客様からのクチコミが良くなくて辞退を決めた。(25歳女性)
- ●採用担当者の連絡が遅いうえに、前日の21時ごろに連絡があり、希望していない翌日の面接日を指定された。(30歳女性)
- ●電話対応が難しいため、メールでの連絡お願いしますと備考に書いているにも関わらず電話がかかってきたこと。何も読んでいないと感じた。(32歳女性)
- ●人事の人との面接でしたが、最初から対応が悪く面接というより、自分が話した内容へのダメ出しの時間でした。こんな人がいる会社では仕事したくないし、商品も使いたくないと思ってしまいました。(23歳女性)
- ●面接官の話を聞く態度がとても悪かった。リアクションしない、話している途中に携帯を触るなど不快な態度で、この会社はいい加減な仕事の仕方をしているのではと疑い辞退した。(23歳男性)
- ●社長が最終面接だったが、タバコを吸いながらの面接。ホームページに、休日に集まってのBBQが半ば強制であるかのような記載もあり辞退。(39歳男性)
- ●面接から入社までの流れがスピーディーだった。(31歳女性)
- ●採用面接の日程調整が柔軟であったり、Web面接や対面どちらでも選べたり、選択肢がたくさん用意されている企業は印象が良い。(32歳男性)
- ●こちらの就活の軸を否定せず、「その考えは正しい」と断言してくれた社長がいた企業は働きたいと思った。(23歳女性)
- ●「あなたの人生がかかっているため、納得して入社を決めることができるよう、さまざまな会社をしっかり見極めるべき」と言われ、会社だけでなく転職者への思いやりを感じた。(29歳女性)
- ●人事から「前回の面接官が、面接をして花丸を付けたのはあなたが初めてだった」と言われたとき。また社長との最終面接で、社長がとても話しやすかったことも決め手の一つ。(33歳女性)
- ●子育て中で、子供が発熱した場合は、主に私がお迎えに行かなければならないので子供優先で働かせて頂きたい旨をお伝えした時に、当時の部長さんが自分も孫がいるから凄くわかると仰ってくださってここで働こうと決意しました。(26歳女性)
- ●面接後、面接官にオフィスツアーと社員紹介をしてもらい、会社の良い雰囲気を感じられた。(35歳男性)
- ●面接終了後、すぐに電話があり、「まだ決定ではないが前向きに検討したいと考えている」と連絡があったこと。期待や歓迎されているのが伝わってきたから。(30歳女性)
- ●新型コロナウイルス感染拡大前だったが、内定をもらった際に「君の力に期待しているよ」と両手で握手を求められた時は、必要とされていると思い内定を承諾する決め手になった。(36歳男性)
いよいよ2022年も終わりが見えてきました。景況感や政界情勢の不透明さはあるものの、採用市場は引き続き売り手市場が続く見込み。応募者に逃げられ、辞退されてしまうことはこれまで以上に避けたいところです。本特集によって、面接前、面接後、内定後それぞれの辞退理由を確認し、貴社の採用活動の改善策が見つかれば幸いです。ぜひご参考ください。