人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
若手社員が、繁忙期にもかかわらず「今日は予定があるので」と悪びれもなく定時で帰ってしまい、現場が騒然としています。
同僚には「オレ、残業キャンセル界隈の人なんで」と言っているらしいのですが、結果的に、彼の業務を他の社員がカバーしており、チーム内から不満の声が上がっています。業務命令として残業を強制することはできるのでしょうか?
「○○キャンセル界隈」という表現、ご存知ですか?「風呂キャンセル界隈」など、風呂に入るのが面倒くさい、入る気力がないという人が「今日は風呂キャンセル」と、SNS上に投稿することで、同じ気持ちの人から共感のコメントが集まり、話題になりました。そしてこの「○○キャンセル界隈」の職場版が「残業キャンセル界隈」です。
さて、定時になったら仕事が残っていても帰ってしまうこの現象。法的には、企業が労働者と36協定を締結し、就業規則等に残業を命じる旨の規定があれば、業務上の合理的な理由がある限り、社員は原則として残業命令を拒否できません。しかし、社員の体調不良や、育児・介護といったやむを得ない事情がある場合は、この限りではありません。
しかし、残業キャンセルの背景には、ワークライフバランスを重視する価値観の変化があります。企業としては、上記の法的な観点と、社員の心情の両面から対応を検討する必要があるでしょう。
そのため、まず一方的に命令するのではなく、1on1ミーティングなどで理由をヒアリングすることが重要です。単に「予定があるから」という理由であっても、それが自己投資のための学習や重要な私用である可能性も考えられます。
理由を把握したうえで、
●「業務の必要性の説明」なぜその残業が必要なのか、緊急性や重要性を丁寧に説明し、納得感を得る努力をする。
●「業務プロセスの見直し」特定の社員に残業が偏っていないか、日中の業務に無駄がないかを見直し、組織全体で生産性向上に取り組む。
●「残業の予測可能性の向上」突発的な残業を減らし、可能な限り早い段階で残業の可能性を伝え、社員が予定を調整しやすくする配慮も有効です。
それでも正当な理由なく繰り返し残業を拒否し、業務に支障をきたす場合は、就業規則に基づき注意・指導を行い、それでも改善が見られなければ懲戒処分を検討することになりますが、まずは対話を通じた相互理解を目指すことが肝要です。