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「何度も面接官をしていますが、本当に応募者を見極められているかよくわからない」
「面接については基本的に一人でやってきたので、もっと良いやり方がありそうな気がする」
面接官をしている中小企業の人事・採用担当者や経営者から、そんな声が多く聞かれます。多くの面接官はトレーニングを受ける機会や、同様の仕事をする同僚はなく、我流になりがちです。実践を重ねることで選考はできるようになったと思うものの、もっとよいやり方があるのでは?と思案する声も。
そこで今回は、「我流面接アップデート大作戦」と題し、面接の原理原則や心得、使える質問やツールをご紹介します。ご自身に必要なポイントをチョイ足しして、ぜひ面接スキルをアップデートしてください。
※厚生労働省 令和7年(2025年)4月分 (2025年5月30日公表)
有効求人倍率(パートタイムを含む一般)/2025年の月別の数値は季節調整値
厚生労働省が発表した令和7年4月の有効求人倍率は1.26倍と、前月と同水準となりました。また、完全失業率は2.5%と、前月と同水準。求人・求職の動向や調査結果からは、求人数が底堅く推移し、緩やかに持ち直している模様。また、物価上昇等が雇用に与える影響に留意する必要があり、企業側にとっては依然採用難易度は高い状況です。
正社員求人を出しても、応募が集まりにくい・少ないという声が少なくない今だからこそ、応募者をきちんと見極める面接官の力量が重要になります。
上図は氷山のようなモデルですが、波線の上部分が、面接で「見えやすい特徴」。波線の下部分が「面接で見えにくい特徴」です。
「我流」面接官で多いのは、応募者の態度やスキル・経験など「見えやすい特徴」の把握と見極めに重点を置いてしまうパターンです。これは自社での「仕事内容・ポジション」に適合するかという、「スキルマッチ」の部分。もちろんスキルマッチは重要ですが、見えにくい部分である「資質・性格・価値観」を把握し、「自社の社風や社員の価値観にマッチ」するかを見極めることこそ、チョイ足しして頂きたいポイント。
「スキルマッチ」を重視する面接をしている場合、「資質・性格・価値観」についての質問はあまりしたことがないという方が多いでしょう。また、「性格」等に関する質問を増やすと、応募者から「何故、こんなことばかり聞くの?」と不審に思われる場合も。
たとえば、エンジニアなど継続的に新技術の習得が必要な職種の面接の際は、「学習意欲」に関する質問、社風との相性を測る際にはこの質問を追加するなどピンポイントで使うと効果的です。ぜひ有効な面接質問をチョイ足ししてください。
学習意欲を見極める質問 | 最近読んだ本は何ですか?また簡単に本の概要、学んだことを教えてください。 |
(仕事/プライベート含めて)日々取り組んでいること、学んでいることはありますか? | |
仕事に限らず、恒常的に学んでいること、勉強していることはありますか? | |
これまで継続して努力してきたことはありますか? | |
社風との相性を測る質問 | 当社を調べていくなかで、共感したポイントはどこですか? |
当社で活躍している人はどんなイメージですか?●●さん(応募者)はイメージされた方に近いですか? | |
当社は△△な社風を大事にしていますが、このような環境についてどう思われますか? |
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見 極 め |
情報収集 | 採用判定に必要な情報を導き出す。判定に必要な本人の本音はもちろん、本質を類推するために十分な情報量を得ることが重要となる。 |
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評価・合否決定 | 採用基準の項目の判定を行い、合否を決定する。迷った時の取り扱いを事前に取り決め強引な評価を避ける。 | |
魅 力 づ け |
情報提供 | 応募者が必要とする情報を提供し、意思決定を支援する。 応募者の選社基準の把握が重要となる |
魅力づけの実施 | 良い印象を与え、入社への動機を形成する。非言語情報で良い印象を与えるのはもちろん、新たな気づきの発見や達成感を提供することが重要となる。 |
「我流」面接官のアップデートポイント。二つ目は、「魅力づけ」です。
先述の通り、面接官は様々な面接質問を使い「見えやすい特徴」「見えにくい特徴」の情報を引き出すことで採用可否を見極めますが、ここだけで終わってしまっているという方も。実は面接官のもう一つの重要な役割こそが「魅力付け」。面接質問によって把握した応募者の資質や性格に対して、自社の情報を正直に話すことで、入社への動機を形成します。
たとえば、学習意欲が高いと判断したエンジニア候補の方に、自社の教育研修の体制や資格取得の補助に関する制度や、学びを大事にする社風に関して紹介すること。また管理職候補者などに、会社でまだ整っていない制度や組織体制について開示し、今後の方針を共有して改善を一緒に進めたいと正直に打ち明けるという会社も。
つまり、良いことばかりを言うのではなく、応募者が「入社の判断」をするための材料を提供することこそが「魅力づけ」の要諦と言えるでしょう。また、面接を通して、応募者が気づいていなかったご自身の魅力や転職動機を整理し、言葉にして伝えてあげることで、貴社により強い魅力を感じるはずです。
① ハロー効果 | 有名大学出身等、特定の優れた点があると、他も優れていると評価してしまう。逆もあり。 |
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② 寛大化傾向 | 面接官と出身地が一緒の場合や、趣味が共通だった場合、評価が甘く(寛大に)なる。 |
③ 論理的誤差 | 高学歴だから職務遂行能力も高いはず等、この人物はこういう人だと想像や推測を紐付けてしまう。 |
④ 対比誤差 | 自身の苦手分野を持つ応募者を過大に評価。逆に自分の得意分野を持つ応募者を過少小評価してしまう。 |
⑤ 対比効果 | 直前に面接していた応募者が大変に優秀であった場合、次の応募者が実際には平均以上であっても、劣っているとして評価してしまう。 |
⑥ 情実評価 | 応募者から聞いた苦労話等に、個人的な利害や感情で評価してしまうこと。情に厚い経営者や面接官に多い傾向。 |
⑦ ステレオタイプ評価 | 「字が下手な人は事務処理が苦手に決まっているから、うちの仕事には向いていない」など、根拠がない思い込みで、人を評価してしまう。 |
「我流」面接官のアップデート三つ目は、「心理的な偏りを自認すること」です。
面接官は、誰でも気づかないうちに自身の主観や感情に左右されている可能性があります。上手は、心理学における偏りの中から、面接官に起こりうるものを抜粋したものです。何かしら心当たりがあるのではないでしょうか?
多くの場合、ご自身以外の面接官を同席させ、面接後に評価について話し合いを行なうことで、心理的な偏りが是正できます。しかし、ひとり人事の場合は難しく、少なくとも「自分の評価に、偏りがあるかもしれない」と自己認知しておくことがチョイ足しポイントです。
また、「面接評価シート」を使い、採用する職種や、役職ごとに評価基準を明文化して、応募者の記録を残すことや、評価システムの導入(適性テスト・リファレンスチェック)も有効です。
見極めの精度を高める「面接評価シート」をExcel形式でご用意しています。
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候補者の現職等の上司・同僚からのレビューで過去の活躍ぶりを可視化し、ミスマッチ防止やガバナンス強化につなげるリファレンスチェックサービスです。
「我流」面接官のアップデートもいよいよ四つ目。特に一次面接でよく使われるWeb(オンライン)面接でのチョイ足しポイントです。
相手の表情や目線、身振りなどが、画面越しでは乏しくなることで苦手意識がある面接官の声もありますが、これは応募者も同様です。面接官側からいつもの対面時よりも「1.5倍程度」大きめのリアクションをすることで、応募者の反応を引き出しましょう。
また、Web(オンライン)面接は、ミーティング画面に繋がると息つく暇もなく会話が始まってしまうため、対面の面接よりも開始時にギクシャクすることも。そのため、面接を始める前のアイスブレイクを意識的に長くとることが大事になります。
アイスブレイクの切り出し例 | 昨夜はよく眠れましたか? |
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今日はお仕事帰りですか? | |
当社のことはご存じでしたか? | |
筆記試験はいかがでしたか? | |
「本日面接を担当させていただく、人事部の●●といいます。」(自己紹介) | |
(遠隔地の場合)そちらのお天気はどうですか? |
最後のチョイ足しポイントは、面接官の応対リストとなります。
応募者から聞こえる面接官への不満で多いのは、「根ほり葉ほり色々なことを質問されたが、質問の意図がわからかった」、「面接官から一方的に質問だけされて、会話にならなかった」という声です。質問の意図を話すことをしていない場合や、応募者の回答を深く掘り下げるまでは至っていなかった場合は、ぜひチョイ足ししてみてください。
また、「職務適性」「退職理由」「志望動機」などに関する質問のポイントもぜひ参考にしてみてください。
「我流面接アップデート大作戦」はいかがだったでしょうか。初心者ではないものの、ひとり人事や経営者、現場社員として面接官を「我流」で実践してきた方で、少しでも取り入れられる部分があれば参考にして頂き、自社の採用選考をアップデートして頂ければ幸いです。