中途採用ノウハウ、ユーザー調査、法改正情報が満載!
アンケート手法:WEBアンケート
アンケート期間:2024年10月29日(火)~2024年11月26日(火)
有効回答数:3,780名
※『エン転職』会員に対するアンケート結果を元にしています。
「少しお時間をいただいても良いでしょうか?」「実は退職を考えていまして…」。
管理職であれば、打ち合わせ後に部下から声をかけられたり、スケジュールツールで予定を押さえられた経験が、あると思います。それくらい、退職の報告はまず上司にされるものです。実際に、これまでに退職の報告を行なったことがある人に、誰に報告をしたかを聞いたところ、9割近くの人が「直属の上司」と回答しています。
また、退職報告の際に伝えた退職理由を聞くと、「新しい職種にチャレンジしたい」、「別の業界にチャレンジしたい」、「結婚など家庭の事情」が上位に。前向きな理由が並び、退職報告を受けた経験からすると、妥当な印象を持ったのではないでしょうか。
しかし、この退職報告に関して、「本当の退職理由」を伝えたかと聞いてみると、56%の人が「伝えた」と回答。一方で、44%の人が「伝えなかった」と答えていました。つまり、退職者のほぼ半数、2人に1人が、「本当の退職理由」を上司・会社に伝えていないということになります。
ここからは、伝えなかった本当の退職理由について確認していきましょう。
本当の退職理由で、もっとも多かったのは「人間関係が悪かった」でした。全体の4割近くの人が「人間関係の悪さ」について挙げています。「人間関係が悪い」という状況については、セクハラやパワハラなどの被害、威圧的な関係性、その関係を放置しているなど、様々なコメントが散見されました。第2位は「給与が低い」、第3位は「会社の将来性に不安を感じた」が続き、確かに上司や会社に面と向かっては言いづらい退職理由です。
さらに、本当の退職理由を上司に伝えなかった理由を聞くと、「円満退社したかったから」が最多に。「話しても理解してもらえないと思ったから」、「建設的な話し合いにならないと思ったから」が続き、下手に慰留をされることなく、波風も立てず、速やかに退職したいという意向や、会社に対して言っても無駄という諦めの心境が、口を閉ざす要因になっているようです。実際の声も参照してみましょう。
アンケート調査によって、退職の報告の半数近くは、本当の退職理由ではないということが見えてきました。「それがよくないの?」「社員が波風を立てたくないのであれば、無理にホンネを聞かなくても…」という意見もありますが、もし特定の部署や人物の周辺で、離職者が続くといった場合は、組織内に問題が潜んでいるのは間違いないでしょう。ただでさえ、人材不足・採用難の今、なにもせず離職者を増やすことは、会社として大きな損失を生みます。ぜひ、以下の手法を参考に組織課題の対策を検討します。
直属の上司が退職の原因になっている可能性や、部署の雰囲気を上司が容認している可能性もあり、会社内の第三者として他部署(人事・総務など)からヒアリング(面談)する手法です。「今回の退職理由とは別で」と前置きした上で、「あくまで組織をより良くするための意見が欲しい」と、部署内の人間関係、マネジメントや給与・人事制度等についてもフラットに意見を聞きましょう。
同じ部署、チームメンバーから話を聞いてみる手法です。「人間関係の悪さ」の要因や、部署やメンバーたちの粗探しをしていると思われないよう、前向きに「どうすれば退職者は辞めなかったか」意見を聞きたいというスタンスで話を聞くことが重要です。退職者自身への悪口大会にならないよう、組織全体や、人間関係を把握していくことで、問題点が見えてくるはずです。
こちらは、そもそもの採用ミスマッチや、フィットできずに退職になったと判断した場合の手法です。そもそも合わない人を今後は採用しないよう、退職者の傾向や共通するキーワードをまとめ、部署にフィットしない人材の要件を明文化。その後、採用時の選考基準に反映させることで、ミスマッチ離職は減少するはずです。
春先などによく話題に上がる「退職代行」サービス。労働者本人に代わって、業者や弁護士が会社側に退職の意思を伝えるサービスですが、近年若手を中心に利用者が微増しています。会社との関係性がそもそも良くなかった、上司だけでなく誰にも退職を言い出すことができなかったという人が増えていることが見て取れますが、今後は退職理由どころか、退職の報告自体もされない事態が増える可能性があります。ぜひ、早いうちに組織課題を把握する手段を整えておくことをお勧めします。
今回の特集「上司の知らない「本当の退職理由」」はいかがだったでしょうか?本当の退職理由は上司にとっては耳の痛い話かもしれません。しかし、把握することができれば組織改善のヒントが多くつまっているはずです。ご紹介した手法をご参考いただき、実践いただければ幸いです。