人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
新米の人事です。最近、最低賃金が上がったというニュースを見ましたが最低賃金とは何でしょうか?最低賃金の種類や企業が守らなかった際の罰則まで教えて下さい。
使用者である企業は、最低賃金以上の賃金を、労働契約を結ぶすべての従業員(アルバイト・パート・派遣・日雇い・契約社員・正社員など)に支払う義務があります。
毎年10月に改訂される最低賃金ですが、2023年度は全国平均が1004円と初めて1000円台を突破、国が想定した1002円を上回る結果となりました。国が示した全国平均の目安額を上回るのは7年ぶりで、全ての都道府県で過去最大の上げ幅となりました。特に九州・東北・中国地方における大幅引き上げが目立ち、岩手県を除いて40円以上の賃上げが行われています。
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■最低賃金の種類
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続いて、最低賃金の種類と計算方法について紹介していきます。
最低賃金には地域別最低賃金及び特定最低賃金の2種類があります。この両方が同時に適用される場合、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
・地域別最低賃金
現況で触れた最低賃金のことです。毎年10月に改定され、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者と使用者に対して適用されます。
計算する際、該当する自治体の最低賃金を確認し、時間あたりの賃金が地域別最低賃金以上であれば問題ありません。下回っている場合は、最低賃金法違反となります。
・特定最低賃金
特定の産業について設定されている最低賃金です。特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。
関係労使の申出に基づき、最低賃金審議会の調査審議を経て、同審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について設定されています。
こちらも計算の際、時間あたりの賃金が特定(産業別)最低賃金以上であれば問題ありません。下回っている場合に最低賃金法違反となるほか、特定(産業別)最低賃金が地域別最低賃金よりも低い場合は、地域別最低賃金が優先されることにも注意してください。
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■最低賃金の対象となる賃金・除外対象の賃金
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では、どの賃金が制度の対象となるのでしょうか。
原則、毎月支払われている基本的な賃金が制度の対象となりますが、以下については除外となります。
・臨時的に支払われる賃金
・1ヵ月を超える期間ごとで支払われる賃金
・所定労働時間を超えた労働時間に対して支払われる賃金
・所定労働日以外で働いた分に対する賃金
・22時から翌朝5時までの深夜労働のうち、通常の労働時間の賃金を超えた割増分
・精皆勤手当や通勤手当、家族手当
●具体例:慶弔手当・賞与・時間外割増賃金・休日割増賃金・深夜割増賃金など
また、すべての従業員に適用されると先述しましたが、派遣労働者に関しては、派遣先での最低賃金が適用されることに注意しましょう。たとえば、派遣元とは異なる都道府県に派遣され就業した場合、派遣先の地域別最低賃金もしくは特定最低賃金が適用されます。
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■減額の特例対象者
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原則として、使用者には最低賃金以上の賃金支給が義務付けられますが、減額の特例制度が設定される場合があります。
使用者が都道府県労働局長の許可を受けるという条件を前提に、下記労働者については個別で減額制度が適用となります。
(1)特定最低賃金の対象産業における適用外
・18歳未満もしくは65歳以上である
・雇入れ後一定期間未満であり、技能習得中である
・該当する産業に特有の軽易な業務に従事している
(2)労働能力における適用外
・精神/身体の障害によって労働能力が著しく低い
・試の使用期間中 (※いわゆる試用期間中)
・認定職業訓練を受けている人のうち、厚生労働省令で定められている一部労働者
・軽易な業務に従事
・断続的労働に従事
●最低賃金の減額の特例許可を得るには?
最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)を2通作成する必要があります。提出先は都道府県労働局長あてに、所轄の労働基準監督署長を経由して提出します。人事担当の方は、覚えておくと良いでしょう。
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■もし最低賃金以上の額を払っていなかったら?
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先ほど少し触れたように、最低賃金法により、企業の義務と違反時の罰則が存在しています。
(1)最低賃金の周知義務
最低賃金法第8条および最低賃金法施行規則第6条により、使用者は、適用される最低賃金額・算入しない賃金・効力発生年月日を労働者に周知する義務があると定められています。これに違反した場合は、最低賃金法第41条に基づき、30万円以下の罰金に処せられます。
(2)最低賃金額以下の支払いに係る罰則
・地域別最低賃金の場合
使用者が地域別最低賃金額以上を支払うことは、最低賃金法第4条第1項で定められています。これに違反した場合、最低賃金法第40条に基づき、50万円以下の罰金に処せられます。
・特定最低賃金の場合
最低賃金法ではなく労働基準法第24条に基づき30万円以下の罰金に処せられます。労働基準法第24条では、労働者に対する賃金の支払い方法において下記条件を定めています。
・通貨
・全額
・直接
・毎月1回以上
・一定期日を定めて支払う
「最低賃金」の基本的な知識から、2023年度の最低賃金についてや法律に関することまでをお伝えしました。最低賃金を守ることは、従業員の生活を守るためにもとても大切なことです。人事担当者として、法律関係や最新の情報を理解し、自社の制度も把握しておきましょう。
<監修>-------------------------------------------------------------
手塚伸弥|『人事のミカタ』編集長/第二種衛生管理者/認定心理士
2001年から人材系企業にて求人広告・採用広報ツールなどのコピーライター、クリエイティブディレクターを経て、2014年エン・ジャパン入社。以後、編集長として採用・人事労務・雇用関連の調査や情報発信を行なう。
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