人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
退職する社員と、退職日当日に「3年以内は同業他社への転職をしてはならない」といった事項を含む誓約書を取り交わそうとしましたら、すでに同業他社への転職が決まっているため、誓約は交わせないと拒否されました。退職時にはこういった誓約を取り交わさねばならない、といったことは、以前より口頭では伝えていたのです。こういう事態になってしまったら、もう同業他社への転職をとめることはできないのでしょうか。
いわゆる競合避止義務ですね。これは退職時の誓約書で履行させられるものではありません。また、憲法第22条では「職業選択の自由」が保障されていますので、実際に同業他社への転職を阻むことは非常に困難です。
しかし、貴社の就業規則に競合避止義務の規定があり、これに違反した場合の退職金規定での減額や返還義務等が明記されていれば、誓約書の有無とは関係なく、競業避止義務違反に問うことはできます。競業禁止が合理的なものか否かは、退職後の業務内容、元使用者が競業行為を禁止する必要性、労働者の従前の地位・職務内容、競業行為禁止の期間や地域、金銭の支払いなどの代償措置の有無などにより判断されます。誰でも彼でもの競合避止義務を問うことは事実上困難ですが、実際に、上記の条件に該当し、競業禁止が合理的な範囲であり有効とした裁判例もあります。
競合避止義務の他に、秘密保持義務があります。こちらも就業規則で規定しておく必要がありますが、退職時であってもこの書類の方が、まだサインさせやすいでしょう。
また誓約書は、退職時よりむしろ心理的抵抗の少ない入社時にとっておくことをお勧めします。