人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
給与計算で間違って過払いをしてしまいました。翌月の給与支払いで精算することは、賃金の全額払いに抵触するのでしょうか?また過去に過払いが発生していたことが発覚した場合、清算はいつまで遡ることができるのでしょうか。
賃金は全額払いが原則とされていますので、賃金から過払い分を控除することはできないものとなりますが、過払い部分を賃金から控除するという内容の労使協定がある場合には、例外として控除が認められます。(労働基準法24条1項)
また労使協定がない場合でも、「前月分の過払い賃金を翌月分で精算する程度は、賃金それ自体の計算に関するものであるから、法第24条の違反とは認められない」としており(昭23.9.14基発第1357号)、判例でも、給与から控除する時期・控除の方法、控除する金額等から判断して社員の生活をおびやかすおそれのない場合には控除が認められています。(最高裁判例S44.12.18福島県教組事件)
続いて、過去の過払いについてどの程度まで遡って清算できるのかという点ですが、使用者から労働者に対する過払い部分についての不当利得返還請求権の時効は原則として10年と考えられます。(民法167条1項)
ただし過払いされた社員や給与担当者が過払いがあったという事実を知っていたのか、いつ知ったのかによって判断が異なってきますので、事実を知った時点で迅速に処理することが大切でしょう。