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年次有給休暇中の賃金についてですが、変形労働時間制を採用していて各日の所定労働時間が異なるときは、どのように賃金を算定すればよいでしょうか。
年次有給休暇の賃金の計算方法には以下の3種類があります。
(1) 労働基準法第12条に定める平均賃金
(2) 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3) 健康保険法第3条に定める標準報酬日額に相当する金額
月給・日給制をとっている場合、各日の所定労働時間の違いにかかわらず賃金は同じであり、有給休暇期間中も同様ですが、時給制の場合はどの方法を選択するかによって違いがでてきます。
(1)の「平均賃金」は過去3ヵ月の賃金総額をその期間の総日数で除した金額ですので、各日の所定労働時間の違いに寄らず一律の賃金となります。従業員への説明はしやすい一方、都度平均賃金を算出する負荷が発生します。
(2)の「通常の賃金」は各日の所定時間に応じて算出するものですので、算出方法としては一番シンプルですが、有給休暇を取得する日の所定労働時間によって支払い金額が変わるため、“所定労働時間が長い日に有給休暇を取得したほうが得だ”といった損得勘定が生まれることも考えられます。
(3)の「標準報酬日額に相当する金額」については、(1)と同様、各日の所定労働時間の違いによらず一律の賃金となりますが、この方法を選択する場合は労使協定が必要になります。また定時改定や随時改訂があれば都度見直しが必要になること、算出基礎額が固定的賃金(固定的に支払われる各種手当も含む)になるため同じ給与体系であっても支払賃金に差が出ることなどにも注意を払う必要があります。
尚、(1)~(3)のどの方法を選択するかは、予め就業規則等で定めておく必要があり、ケースごとに変更することはできません。
変形労働時間制を採用している場合、有給休暇の取得日によって何らかの不均衡が出ることは避けられず、上記いずれの方法にもメリット・デメリットが存在しますので、会社の実情に合わせて適切な計算方法を選択することをおすすめします。