人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
入社まもなくすぐに退職した社員の給与を、家族の方が取りに来られました。給与はご本人にしかお渡しできない、と申し上げますと、本人はどうしても会社に来ることができず、代理で取りに来た、とのことでした。こういった場合、家族の方に給与を預けても問題ないのでしょうか?
労基法24条は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、全額を支払わなければならない」として、賃金の直接払いの原則を定めています。この規定は、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものですから、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うことや、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、本条違反になります。また、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となります。
これは、かつて人夫供給を業とする親方等が賃金をピンハネしたり、子どもの賃金を親が食い物にするなど前時代的中間搾取の弊害を改める趣旨の規定です。ですので、親権者であっても認められていません。
ただし、たとえば、労働者が病気欠勤中に妻子が賃金の受領を求めるようなときは、労働者本人の「使者」として、これに対する支払いは直接払いの原則に反しないとされています(昭63.3.14基発150号)。代理か使者かを区別することは実際上困難な場合が多いですが、社会通念上、本人に支払うのと同一の効果を生ずるような者であるか否かによって決定すべきことになります。
しかし、もし上記の「退職した社員」が行方不明の場合には、配偶であっても、「使者」とすることは困難ですので、配偶者に支払っても有効な支払いとみられない場合があります。
このような場合、会社は、労働者本人が受領にくるまで賃金を管理(民法644条)していればよいということになります(管理期間は、 労基法115条により、賃金の消滅時効の2年間です)。