人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
中途採用で入社して1年経つ社員がいます。簡単な事務作業でもミスを連発し、何度同じ指導をしても業務を覚えられません。
本人に悪気はなく真面目なのですが、任せられる仕事がほとんどなく、教育担当の社員も疲弊しています。他の部署への配置転換も検討しましたが、受け入れ先が見つかりません。最終的に、解雇も視野に対応を検討すべきでしょうか?
著しく能力が低く、業務に支障をきたす社員(ローパフォーマー)への対応は、多くの企業が抱える難しい問題です。解雇を検討する前に、企業としてやるべき手順を尽くしているかが法的に問われます。
まず、「能力不足」を客観的な事実として記録することが重要です。人事評価の結果、具体的な業務上のミス、指導記録、顧客からのクレームなどを時系列で記録・保管します。その上で、本人との面談を通じて、会社が求める水準と現状のギャップを具体的に伝え、改善目標を共有します。
次に、改善のための具体的な機会を提供しなければなりません。複数回にわたる研修の実施、OJTによる丁寧な指導、目標達成に向けた定期的なフィードバックなど、企業として教育・指導の義務を果たしたという事実が不可欠です。
それでも改善が見られない場合は、本人の適性を考慮し、他の部署への配置転換を検討します。本人の能力や特性が活かせる部署がないかを探す努力も、企業の義務と見なされます。
これらの手順を尽くしてもなお、業務遂行能力が改善されず、雇用契約の維持が困難であると客観的に判断される場合に、初めて退職勧奨や普通解雇が選択肢となります。能力不足を理由とする解雇は、裁判で無効と判断されるリスクが非常に高いため、専門家にも相談しながら、慎重にプロセスを進める必要があります。