人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
「入社日を来年の4月で考えていますが、応募しても問題ないでしょうか?」と質問があり、年内中に在籍企業と退職交渉を済ませるという条件で、選考に進んでもらった求職者がいます。
その求職者に内定を出したのですが、後になって育児休業中であることが発覚。退職交渉がすぐに出来ないため、来年の2月まで待って欲しいと相談がありました。来年4月の入社予定は変わらないものの、応募時と話が違うことに不信感を感じました。その場合、内定取り消しは可能でしょうか。
採用内定の取消の適法性については、基本的には、採用内定通知書や内定者が会社側に提出した誓約書などに記載された「取消事由」を参考にして判断します。
ただし、判例では取消事由が存在するときでも、以下の要件を満たさない限りは、違法になると判断しています。
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(1)採用内定当時知ることができず、または知ることが
期待できないような事実であること
(2)解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在しており、
社会通念上相当として是認することができること
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客観的に合理的な理由としては下記の様な事例が該当します。
・採用内定者が留年した場合
・採用内定者が傷病によって働くことができなくなった場合
・採用内定者の提出書類に虚偽の記載があった場合
・採用内定者による犯罪行為が明らかになった場合
今回のケースでは、会社側としては採用内定者が前職を退職し、退職後に働くことを前提に雇用することを予定しています。そのため、前職の退職が期待できず、働くことができないのであれば、当然、内定の取り消しは認められます。
しかしながら、入社予定日まで期間がありますので、前職の退職が期待できないかどうか再確認する必要もまたあるのではないでしょうか。
会社側の主張もよく分かりますが、現時点で内定取り消しは難しいと考えます。育児休業を取得することは労働者側の権利でもありますので内定者側の言い分についても一定の理解を示すことも肝要かと存じます。
会社側にも受入準備等があることを本人に伝え、この日までに退職を確定させてほしいという日を改めて本人と確認し合って、それが守られない場合に内定取り消しの判断をされてはいかがでしょうか。