人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
セクハラとは実際にどういった言動が該当するのでしょうか。また、セクハラを防止するために、企業としてどのようなことを行えば良いでしょうか。
職場におけるセクシュアルハラスメントの定義とは、
(1)「職場」において行われる
(2)「労働者の意に反する上司や同僚からの性的な言動」により、労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害される状態を指します。
ちなみにここで言う「職場」を「社内」、「労働者」を「正社員」、「性的な言動」を「異性に対するもの」と想像する方がいるかと思いますが、実際には違う部分がありますので確認していきましょう。
「職場」は、普段出社して働く場所以外の労働者が業務を行なう場所「すべて」を指します。出張先や取引先、移動中の車内など業務を行なう場所であれば「職場」に該当します。。
「労働者」は、正社員だけを指すものではありません。パートタイム労働者や契約社員など雇用されている全ての人を指します。
「性的な言動」とは、性的な内容の発言および行動は、異性に対するものだけではなく同性への行動も含まれます。また、顧客や患者、生徒など業務上で関わる人全てがセクシュアルハラスメントの対象になり得ます。
-------------------------------
セクハラのパターン例
-------------------------------
大きく「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の二つがあります。
・「対価型セクハラ」とは、
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の拒否や抵抗により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受ける嫌がらせのことです。
<典型的な例>
●事務所内において、事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること。
●出張中の車中において上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をすること。
●営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること。
・「環境型セクハラ」とは、
労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。
<典型的な例>
●事務所内において上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。
●同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。
●事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。
-------------------------
セクハラの基準
-------------------------
セクハラには明確な基準がありません。一般的には、
(1)性的な言動に当たるかどうか
(2)労働者が不利益を受ける、又は労働者の就業環境に悪影響があったかどうか
の二点が大きな判断基準となります。
企業として、社員からセクハラの相談を受けた場合は、上記の基準に基づき、相談者のプライバシーを守った上で、証拠をもとに事実を確認し、相談者と今後の方針について話し合いを行ないましょう。
その際、自分一人の判断で対応を進めるのは適切ではありません。できるだけ早く社内の上部や、相談窓口に報告を行ないましょう。
社内での対応が難しい場合には、弁護士や労働基準監督署などの外部機関に相談し、適切な事後救済、再発防止を徹底していきましょう。
-------------------------
セクハラによる企業のリスク
-------------------------
セクハラについては、男女雇用機会均等法11条1項において、企業のセクハラ防止措置義務が定められています。
セクハラ防止措置を講じないことを理由に、会社に対して、直ちに罰則を科す規定はありませんが、違反した場合は厚生労働大臣からの助言や指導、勧告を受けることがあり、勧告に従わない場合はその事実が公表される場合があります。
ただし、厚生労働大臣は、男女雇用機会均等法の施行に関して必要があると認めるとき、事業主に対して報告を求めることができ、事業者が報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の過料に処せられることがあります(雇均法33条、同29条1項)。
セクハラを発生させた企業として公表されると、社会的な信用の失墜につながり、ビジネス上不利益の発生や、採用活動等にも悪影響が出る可能性があります。なにより社員との信頼関係を損ね、モチベーション低下や、場合によっては損害賠償請求を受ける可能性があります。
-------------------------
事業主の責務
-------------------------
職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために、企業が講ずべき措置として、厚生労働大臣の指針により10個の項目が定められており、企業は、これらを必ず実施しなければなりません。
【事業主の方針の明確化及びその周知・啓発】
(1)職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
【相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備】
(3)相談窓口をあらかじめ定めること。
(4)相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
【職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応】
(5)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(6)事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行なうこと。
(7)事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行なうこと。
(8)再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
【上記措置と併せて講ずべき措置】
(9)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
(10)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
いかがでしょうか。企業内でセクハラが発生するリスクは非常に大きなものです。そういったことが発生しないよう、企業の人事として、セクハラにおける講ずべき措置や判断基準を把握し、適切な防止対策を行なってください。