人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
障がい者採用を担当していますが、2024年以降法改正があると聞きました。また、雇用した際の助成金などについても教えてください。
社員が一定数以上の規模の企業は、従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。
この企業に義務付けられている「法定雇用率」が、2024年4月より現行よりもう一段階、引き上げられることが決定しています。
これまで民間企業における「障がい者の法定雇用率」は「2.3%」でしたが、2024年からは「2.5%」に引上げ。さらに、2026年7月には「2.7%」まで引き上げられます。加えて、障がい者雇用の対象となる企業の範囲も広がっています。2026年では「従業員数37.5人以上」の企業には障がい者の雇用義務が発生することになります。参考にしてください。
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期間 |現行 |24年4月~ |26年7月~
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法定雇用率 |2.3% |2.5% |2.7%
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障がい者雇用の|従業員 |従業員 |従業員
対象となる |43.5人 |40人 |37.5人
事業主の範囲 |以上 |以上 |以上
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以下、様々な変更点や助成金を紹介します。詳細を確認したい方は、ぜひご確認ください。
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■障がい者雇用の除外率
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2025年からは除外率が、各除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられ、以下のように変わります。(現在除外率が10%以下の業種については除外率制度の対象外となります。)
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除外率設定業種→ 除外率
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・非鉄金属第一次製錬・精製業・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)→5%
・建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業(信書便事業を含む)→10%
・港湾運送業・警備業→15%
・鉄道業・医療業・高等教育機関・介護老人保健施設・介護医療院→20%
・林業(狩猟業を除く)→25%
・金属鉱業・児童福祉事業→30%
・特別支援学校(専ら視覚障がい者に対する教育を行う学校を除く)→35%
・石炭・亜炭鉱業→40%
・道路旅客運送業・小学校→45%
・幼稚園・幼保連携型認定こども園→50%
・船員等による船舶運航等の事業→70%
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■障がい者雇用における算定方法も変更になります
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・精神障がい者の算定特例の延長(2023年4月以降)。
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障がい者について、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定できるようになります。
・一部の週所定労働時間20時間未満の方の雇用率への算定(2024年4月以降)。
週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障がい者、重度身体障がい者及び重度知的障がい者について、雇用率上0.5カウントとして算定できるようになります。
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■障がい者雇用のための企業支援も強化
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◆雇入れやその雇用継続に関する相談支援、加齢に伴う課題に対応する助成金が新設されます。
・障がい者雇用に関する相談援助を行う事業者から、原則無料で、雇入れやその雇用継続を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助を受けることができるようになります。
・加齢により職場への適応が難しくなった方に、職務転換のための能力開発、業務の遂行に必要な者の配置や、設備・施設の設置等を行った場合に、助成が受けられるようになります。
◆既存の障がい者雇用関係の助成金を拡充
障がい者介助等助成金(障がい者の雇用管理のための専門職や能力開発担当者の配置、介助者等の能力開発への経費助成の追加)や、職場適応援助者助成金(助成単価や支給上限額、利用回数の改善等)の拡充、職場実習・見学の受入れ助成の新設など、事業主の皆様の障がい者雇用の支援が強化されます。
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■障がい者を雇い入れた場合に受けられる助成金
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(1)トライアル雇用助成金(障がい者トライアルコース)
就職が困難な障がい者を、ハローワークなどの紹介により、一定期間試行雇用する事業主に対して助成されます。
【助成額等】
<精神障がい者以外の場合>
・助成期間:最長3か月
・トライアル雇用期間:原則3か月。ただし、テレワークによる勤務を行う者は、最大6か月まで延長可能。
・助成額:1人あたり月額最大4万円
<精神障がい者の場合>
・助成期間:最長6か月
・トライアル雇用期間:原則6~12か月
・助成額:雇い入れから3か月間→1人あたり月額最大8万円
雇い入れから4か月以降→1人あたり月額最大4万円
(2)トライアル雇用助成金(障がい者短時間トライアルコース)
直ちに週20時間以上勤務することが難しい精神障がい者や発達障がい者について、3~12か月の期間をかけながら、20時間以上勤務を目指して試行雇用を行う事業主に対して助成。
【助成額(助成期間)】
支給対象者1人につき月額最大4万円(最長12か月間)
(3)特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
障がい者などの就職困難者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して助成されます。
【助成額(助成期間)】
対象労働者が身体・知的障がい者(短時間労働者以外)である場合
大企業:50万円(1年)/中小企業:120万円(2年)
対象労働者が重度障がい者など(重度障がい者、45歳以上の障がい者、精神障がい者(短時間労働者以外))である場合
大企業:100万円(1年6か月)/中小企業:240万円(3年)
対象労働者が障がい者(短時間労働者)である場合
大企業:30万円(1年)/中小企業:80万円(2年)
(4)特定求職者雇用開発助成金(発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース)
発達障がい者や難病患者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して助成されます。
【助成額(助成期間)】
対象労働者が短時間労働者以外である場合
大企業:50万円(1年)/中小企業:120万円(2年)
対象労働者が短時間労働者である場合
大企業:30万円(1年)/中小企業:80万円(2年)
※雇用保険一般被保険者として雇い入れ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、その雇用期間が継続して2年以上であることが確実と認められること。
※雇用保険一般被保険者として雇い入れ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、その雇用期間が継続して2年以上(重度障がい者などを短時間労働者以外として雇い入れる場合には3年以上)であることが確実と認められること。
<監修>-------------------------------------------------------------
手塚伸弥|『人事のミカタ』編集長/第二種衛生管理者/認定心理士
2001年から人材系企業にて求人広告・採用広報ツールなどのコピーライター、クリエイティブディレクターを経て、2014年エン・ジャパン入社。以後、編集長として採用・人事労務・雇用関連の調査や情報発信を行なう。
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