人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
新任の人事です。新卒の社員から社会保険料について聞かれて上手く答えられませんでした。改めて、社会保険料の種類、負担方法、計算方法等を教えて欲しいです。
社会保険は私たちの生活上なくてはならない公的制度。病気やけが、出産、失業、障害、老齢、死亡などによって生活が困難になった場合に、国や自治体が一定の給付を行う公的な制度です。
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■社会保険の種類
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社会保険料とは、5つの社会保険にかかる保険料のことです。この5つの社会保険は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険のことを指します。
〇健康保険
被保険者や被扶養者が病気やケガ、出産、死亡時に支給される
〇厚生年金保険
被保険者の老後や死亡・障害児に、年金や一時金が支給される
〇雇用保険
労働者の生活・雇用の安定や就職促進のために、失業訓練や手当などが給付される
〇労災保険
労働者が業務上や通勤中に負傷・疾病・死亡・障害などに対して、本人や遺族に対して給付される
〇介護保険
介護サービスが必要な高齢者等に支給される。40歳から64歳までの健康保険加入者が介護保険料を納める。
企業に所属している社員は、5つの社会保険のうち、労災保険を除く4つの保険料は事業主と折半する形で負担する必要があります。一方で、労災保険は全額事業主が負担します。従業員が支払うべき社会保険料に関しては、給料から天引きされます。
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■社会保険料の計算方法
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・健康保険料(従業員が負担する場合)= 標準報酬月額 × 健康保険料率 (÷2)
・介護保険料(従業員が負担する場合)= 標準報酬月額 × 介護保険料率 (÷2)
・厚生年金保険料(従業員が負担する場合)= 標準報酬月額 × 18.3%(保険料率)(÷2)
・(労災保険料+雇用保険料)=賃金総額 × 労働保険料率(労災保険率+雇用保険率)
※雇用保険料の労働者負担率は、勤務先の事業により異なる、2023年度労働者の負担率は0.6~0.7%
社会保険料は基本的には、事業主と従業員が折半して支払うので、従業員の負担分はそれぞれの保険料を計算した後に、半分に除算した額になります。これらに加えて、個人で社会保険料を払っていたり、同一生計の親族の社会保険料を支払っていたりした場合のみ、年末調整で申告を行い、社会保険料の控除を受けられる制度があるので、覚えておきましょう。
■社会保険料の控除対象は?
社会保険料控除の対象となる主な社会保険料は以下になります。
1 健康保険、国民年金、厚生年金保険及び船員保険の保険料で被保険者として負担するもの
2 国民健康保険の保険料または国民健康保険税
3 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料
4 介護保険法の規定による介護保険料
5 雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
6 国民年金基金の加入員として負担する掛金
控除の適用については、保険料または掛金の金額を証明する書類を、確定申告書または年末調整の際に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に添付するか、これらの申告書を提出しないといけません。
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■社会保険料の納付
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社会保険料の納付は、対象企業の義務です。納付期限や納付方法、納付額を正しく把握し、適切に納付するようにしましょう。
社会保険料の納付期限は、翌月末日です。例えば、6月分の社会保険料は7月末日までとなります。ただし、末日が土日や祝日だった場合は、各金融機関の翌営業日が期限となります。納付期限を過ぎると、延滞金が発生するので注意してください。
納付方法は大きく分けて3つあります。
(1)金融機関の窓口での直接納付
(2)指定口座からの振替で納付
(3)電子納付「Pay-easy(ペイジー)」を利用して納付
社会保険料は、事業主と従業員の負担金額や受給できる年金や医療費などに影響する重要な項目です。人事担当者として、理解をしておくことをお薦めします。
<監修>-------------------------------------------------------------
手塚伸弥|『人事のミカタ』編集長/第二種衛生管理者/認定心理士
2001年から人材系企業にて求人広告・採用広報ツールなどのコピーライター、クリエイティブディレクターを経て、2014年エン・ジャパン入社。以後、編集長として採用・人事労務・雇用関連の調査や情報発信を行なう。
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