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働き方改革法が施行されてから、「学びなおし」「リカレント教育」という言葉を耳にする機会が増えました。用語の意味を教えてください。
リカレント(recurrent)は、循環・反復・回帰の意味。日本では、循環教育や回帰教育と訳されることもあります。
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■リカレント教育の必要性
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経済産業省、中小企業庁など政府が進める「人生100年時代構想会議(議長:安倍晋三 内閣総理大臣)」。その会議では「何歳になっても学び直し、職場復帰、転職が可能となるリカレント教育・専門教育の充実、人材育成のあり方、企業の人材採用の多元化、多様な高齢者雇用、そのためのインセンティブ等」が検討されています。
上記構想会議に有識者として参加するリンダ・グラットン(英ロンドンビジネススクール教授)の著書「LIFE SHIFT」(2016年)。
そこで提唱された「人生100年時代」では、「人が100年も“健康に”生きる社会が到来する時、従来の3つの人生のステージ(教育を受ける/ 仕事をする/引退して余生を過ごす)のモデルは大きく変質する」と提言され、生涯にわたり知識・スキルをアップデートし続ける必要があると言われています。
また、AIやロボットをはじめとするテクノロジーの劇的な進化や、労働市場の変化、働く人の学んだ知識やスキルの早い陳腐化なども合わせてよく語られる背景です。
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■リカレント教育のメリット
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リカレント教育には、企業と従業員の双方に、様々なメリットがあります。以下はメリットの一例です。
【企業側のメリット】
・学び直す目的を明確にすることで、得た知識を仕事に活かしやすく、業務の効率化・生産性向上に繋がりやすい。
・最新の技術に対する知識・技術を学び直した従業員がいることで、時代の流れに対応できる。
・優秀な従業員が増えることで、組織力が向上する。
【従業員側のメリット】
・専門的な知識・知見を得ることで、キャリアアップやキャリアチェンジに活かせる。
・知識や知見が深まることで、年収増加に期待できる。
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■リカレント教育の課題
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このように多くのメリットがあるリカレント教育ですが、諸外国と比較すると、日本の普及率は高くありません。日本には長期雇用の慣行があるため、社会人になってから大学に戻って学習するという習慣は定着しづらいというのが実情です。
しかし、リカレント教育を推進する取り組みも行なわれています。日本では、主に文部科学省が中心となってリカレント教育を推進中です。
例えば、「大学の社会人入学制度」を設けたり、働きながら学び直しの場に参加できるように、「夜間部、昼夜開講制度」の導入を進めたりしています。また、厚生労働省ではリカレント教育を推進させるための補助金を給付しています。
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■リカレント教育と補助金
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厚生労働省は、リカレント教育導入の費用を一部補助する『教育訓練給付制度』を設けています。教育訓練給付金には、『一般教育訓練給付金』と『專門実践教育訓練給付金』の2種類ありますので、その違いを解説させていただきます。
【一般教育訓練給付金】
●目的:働く人の主体的な「能力開発を支援」し、雇用の安定と再就職の促進を図ること
●支給対象者:厚生労働大臣が指定した一般教育訓練の受講を修了していること
●対象講座一例:簿記検定、介護職員初任者研修修了を目指す講座など
●給付金額:教育訓練費用の20%相当(上限は10万円)
【專門実践教育訓練給付金】
●目的:働く人の主体的な「中長期的なキャリア形成を支援」し、雇用の安定と再就職の促進を図ること
●支給対象者:厚生労働大臣が指定した専門実践教育訓練の受講を修了していること
●対象講座一例:看護、介護、保育士、美容師、建築士の専門学校など
●給付金額:受講中だけでなく、受講終了後に一定条件を満たすことで追加支給を受けられます
└受講期間中に給付金を受け取る場合:
教育訓練費用の50%相当(上限は受講期間に応じる/1年で40万円、
最大3年で120万円)
└受講終了後に追加で給付金を受け取る場合:
資格を取得して受講修了翌日から1年以内に被保険者として雇用された場合は、
教育訓練費用の20%を追加支給
(上限は受講期間に応じる/1年で16万円、最大3年で48万円)
※一般教育訓練給付金と專門実践教育訓練給付金、共通して教育訓練費用の
20%が4000円を超えない場合は給付金が支給されません。
※詳しくは厚生労働省HPをご参考ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
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(参考)
35歳以上のミドルに聞く 「リカレント教育(学び直し)」調査 90%は「リカレント教育を受けたい」と回答。 課題は「費用負担」「時間確保」「キャリア断絶」。―『ミドルの転職』ユーザーアンケート集計結果―
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/12710.html