人事・採用担当者の「ちょっと困った...」をスッキリ解決!
一口にイノベーションと言っても、検索すると「○○イノベーション」といった様々な種類があるようです。種類や内容について教えてください。
イノベーションは、英語の名詞「innovation(革新・刷新・新機軸)」のこと。
日本では「技術革新」と訳すことが多いですが、これは狭義であり、イノベーションのほんの一部。「技術」に限らずあらゆる手法を用いた革新の総称が、ビジネスの世界でよく使われるイノベーションです。
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■ヨーゼフ・シュンペーターが提唱した5つのイノベーション
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オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターが、著書の中で、以下5つのタイプを提唱しています。
(1)プロダクト・イノベーション(新しい生産物の創出)
従来とは異なる革新的な、新製品・新サービスを開発することを「プロダクト・イノベーション」といいます。「iPod」や「iPhone」は、プロダクト・イノベーションの代表例。これらの製品が登場したことにより、音楽の楽しみ方は一変し、ライフスタイルも劇的に変化しました。
(2)プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入)
製品やサービスに大きな変化を加えるのではなく、生産工程や流通方法を改善することを「プロセス・イノベーション」といいます。代表例としては、「トヨタ自動車のかんばん方式」が挙げられるでしょう。部品の数量などを書いた「かんばん」を部品箱にとりつける。たったそれだけの工夫で、在庫が可視化され、在庫を抱えるリスクが大幅に軽減されました。
(3)マーケット・イノベーション(新しい販売先・消費者の開拓)
新たな市場に参入し、販売先や消費者を開拓することを「マーケット・イノベーション」といいます。地場の工場が、その技術力を活かし、新たな市場に挑戦しているテレビ番組を見たことがある方も多いのではないでしょうか?無水調理を可能にした「鋳物ホーロー鍋」で話題になった、愛知ドビー株式会社も、もとは船舶や建設機械向けの鋳造部品製造や精密加工業を営む、大手メーカーの下請け企業でした。
(4)サプライチェーン・イノベーション(新しい供給源の獲得)
製品をつくるために必要な原材料や、原材料の供給ルートを新たに確保することを「サプライチェーン・イノベーション」といいます。経済産業省では、毎年「サプライチェーン・イノベーション大賞」を発表。例えば、株式会社イトーヨーカ堂は2016年に、大賞を受賞。メーカー(製)、中間流通・卸(配)、小売(販)の連携により、返品削減や配送効率化を実現しています。
(5)オーガニゼーション・イノベーション(新しい組織の実現
組織を変革することで業界・企業に大きな影響を与えることを、「オーガニゼーション・イノベーション」といいます。
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■破壊的イノベーションと持続的イノベーション
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ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセンによる著書『イノベーションのジレンマ』で、対となる2つのタイプを提唱しています。
(6)破壊的イノベーション
市場における既存のルールを根本的に覆し、そこにまったく新しい価値を創出することを「破壊的イノベーション」といいます。この破壊的イノベーションは、提供する価値の違いで2種類にわけられます。
「安さ」によって市場を覆すのが、「ローエンド型破壊」。既存商品よりも、低機能な代わりに、低価格。改良を繰り返すことで、ハイエンド層の取り込みまで狙います。『LCC(格安航空会社)』は、ローエンド型破壊的イノベーションの代表例です。
「技術」によって、市場そのものを新たに生み出してしまうのが、「新市場型破壊」。たとえば、『電子書籍』の登場は、本に関連する市場を大きく変化させました。
(7)持続的イノベーション
既存市場の声を聞きながら改良を重ね、今ある製品・サービスを、今までと同じ方向性でより良くすることを「持続的イノベーション」といいます。大企業の多くは、持続的イノベーションを続けることで、顧客を維持・獲得しています。しかしその反面、破壊的イノベーションが起こすイノベーターが登場すると、既存市場からの撤退や売上減少が起こるリスクもあるようです。
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■オープンイノベーションとクローズドイノベーション
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ハーバード大学経営大学院の教授であるヘンリー・チェスブロウが、以下2つのタイプを提唱しています。
(8)オープンイノベーション
自社とは異なる業種・分野の持つ技術やノウハウを組み合わせることを「オープンイノベーション」といいます。企業や大学が共同でイノベーションを起こすこともあれば、著作権・特許などで制限されていないオープンデータを活用することでイノベーションを起こすこともあります。
(9)クローズドイノベーション
社内資源だけを頼りに画期的な製品・サービスを生み出すことを「クローズドイノベーション」といいます。自社でマーケティングから開発・販売まで完結するため、技術の秘匿が可能。利益も全て自社に還元されます。
しかし、現在の日本において、顧客ニーズの多様化・グローバル化による競争構造の変化などにより、自社だけで対応することが難しくなっています。そのため、徐々に企業の目指すべき変革のタイプが、クローズドイノベーションからオープンイノベーションに変化しているようです。
参考にしてください。